「お急ぎでしたか?」
二人いるうちの優しい顔のほうが、決まってこう尋ねます。
もう一人は、仏頂面で、嘗め回すようにこちらを伺うのがパターン。
普通の人は、気圧されて、すがるように優しいほうへ、何でもすらすら答えます。
これが、覆面パトカーの真実であります。
捕まるたびに、人間心理が分かっているなぁと感心していたけど、どうやら、そういうのって、何度もロープレしているようです、警察学校で。
長岡弘樹氏の『教場』(小学館文庫)は、警察学校を舞台にしたミステリー小説で、2014年の「このミステリーがすごい」ランキングで2位となった話題作です。
警察官になりたいと思った若者が、長い時間をかけて教習を受けてたなんて、知りませんでした。
しかも、この学校は、生徒全員を育てて送り出すのが目的でなく、警察にとって不要な人材を見極めて、ためらうことなく追い出すのをよしとしているだなんて。
なるほど、なりたいと思っている人間を誰でも採用していると、将来に禍根を残すわけで、その目をつぶしていくってのも、必要なことかもしれません。
このあたり、企業の新人教育とは、ものすごい温度差を感じます。
企業の場合、配属前の研修中に、社員が出社拒否なんてしようものなら大騒ぎですからね。
だけど、そういう発想もアリかもしれない。
たくさんお札の入った財布を置いておくとか、自室に戻ったら、ハダカのオネーサンがバスタオル一枚でソファに座ってるとか、ありそうな口利きを依頼し、お礼をたっぷり弾むと持ちかけるなんて、初当選した政治家に対する研修を考えてみました。