2×3が六輔
サラリーマン時代、酔っ払って家に帰り、なんとなくチャンネルを合わせたのが『2×3が六輔』でした。 これが不思議な番組で、起用されているタレントが無名にもかかわらず、実力者揃い。一社提供のCMが番組進行中は、ほとんど入らず、構成の邪魔をしない。一つのテーマについて、永さんが徹底的に掘り下げ、しかも必ずオチがある。 いやぁ、勝手にやってました。しかも、楽しそうに。 当時、広報部でイベント担当だった私は、有名人を招いて一方的に喋りまくる講演会に物足りなさを感じており、もっと立体的に、他社がやっていないようなユニークな企画がないものかと模索していたので、この出会いは渡りに舟でした。 所属事務所に連絡を取って、趣旨説明を行うと、二つ返事でご理解いただき、あっという間にイベントが実現します。 山形・富山・鹿児島と支店開設に合わせて、アカペラやパントマイムやジャズピアノの実力者を引き連れての学校ごっこ。それはもう、贅沢なバラエティー番組仕様でありました。 事前の打合せがほとんどなしで、台本もなし。 イベントので四時間前に楽屋入りすると、永さんが大まかな進行をデザインし、自分が関わらないパートの内容と時間配分を出演者に指示します。それに合わせて、スタッフが小道具を制作するのですが、緊張感の中で、各人がムダなく動くのを見ながら、満足そうにされていた永さんの姿が懐かしく思い出されます。 ちょっとむつかしい話を分かりやすい言葉で伝え、大勢の人に楽しんでいただくために心を砕く。 開演の30分前には、幕前に立ってサービストークです。携帯電話を切れとか、飲食をするなとかの主催者からのメッセージを代読しつつ、本編に繋がるような伏線を張るのですが、今で言うところの前説ですね。これによって、聴衆は今から何が行われるのかを理解し、オープニングからトークが全開となるのです。 なるほど、そんなやり方もあるんだなぁ。 チャリティーを呼びかけるときは、露骨なほどに、社会貢献する企業PRを。 売名行為だとして、やらないよりも、やっている方がエラいと考えるからです。 イベントが終わって、しばらくすると、必ず旅先から絵はがきが送られます。 メッセージはひと言だけなんだけど、達筆なので色紙みたい。 捨てられませんよ、そういう葉書。 人ったらしだねぇ。 我が家には、役得でいただいた色紙が飾られております。それには、こんなメッセージが。 生きているということは誰かに借りをつくること 生きてゆくということはその借りを返してゆくこと いやいや、スゴい人でありました。 享年83歳。合掌。