中学のとき、同じクラスにオオオカさんというコケティッシュな女性がいました。
噂では、大岡越前守の末裔だとのこと。そんなわけね〜だろと思ってましたが、新春のテレビ特別番組に「昭和のお姫様」という企画があって、それに出ていたから納得です。わー、実在の人物だったんだと。
ほとんどテレビからの曖昧な知識ですが、実母継母詮議の件(自分こそが母親だと名乗る二人に子供の手を引っ張らせるやつ)とか、三方一両損の件(三両を拾った男が届けたところ、落とした金は自分のもんじゃないという男に対し、大岡が一両を出して解決を図った話)なんかが知られています。
一休さんより高尚ですね、大岡捌き。
彼女自身は、フツーの人でした。お姫様っぽくはあったけど。
『あしたの君へ』(文春文庫)は柚月裕子の2019年の作品です。
舞台は、家庭裁判所。民事です。ミステリー小説は、殺人がベースなので、白黒がハッキリするけれど、民事裁判は結論がボヤーッとしてます。どちらとも言える。だから、判断する側に相当な人間的スキルが求められるわけで、そのへんのところを研修過程にある主人公と一緒に考えていく青春成長ストーリーです。
いやぁー、柚月裕子は人間心理を描かせたら当代一ですね。素晴らしい。とっても優しい気持ちになりました。89点。