北朝鮮がならず者国家とされるのは、国内に資源も産業もない中で、麻薬や偽造通貨に手を染め、核開発に力を入れているからです。
核兵器は他国への攻撃手段と言うよりも、ミニニュークと呼ばれる小型化された核兵器製造を目指しており、これを欲する国へ売ることによって、外貨を獲得しようとしているからタチが悪いと思われています。
そのためのスパイ活動。拉致なんてどうってことないし、殺人でさえ正当化してしまう。常識の次元が違っているのです。
だから、小説や映画では、名指しでバンバン叩かれます。差別とか偏見の枠を超えちゃっているからです。
『国境事変』(誉田哲也著・中央公論新社)は、在日朝鮮人を巡り、警察庁の刑事部と公安部、それに自衛隊が絡んで愛国心を問う話題作です。
「人命は地球よりも重い」と言った総理大臣がいましたが、その考えは立場によってニュアンスが変わるもの。いろいろと考えさせられてしまいます。
誉田氏の作品は、スピード感に溢れ、ドキドキを加速させますが、ともすると描写が一方的になり、理解が難しくなることがあります。前後する展開が、一人称の主体をわかりづらくさせるのも趣味ではないのでマイナス。スケールの大きさやそれを支える背景の説明は有難いんですけどね。うーん、ちょっと分かりにくかった。81点。