都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

蝸牛考

『全国アホバカ分布考』(松本修著・太田出版)という本があります。

これは、『探偵ナイトスクープ』という番組で、視聴者からの「関西ではアホと言うが、関東ではバカと言う。では、アホとバカの境界線はどこにあるのか?」との疑問に答えたもので、局を超えたネットワークの協力で、大がかりな調査結果をまとめたものです。

 

最初は、いつものように、おふざけでバカバカしさにあふれたロケでしたが、徹底させるしつこさが番組の売りでもあって、徐々に言葉の規則性が明らかになっていきました。

関西人である北野誠探偵が、東京駅を起点として、静岡・名古屋・岐阜へと下りながら、素人にインタビューを重ねたのです。

ここで、意外な発見がありました。

静岡では「バカ」だったのが、愛知県に入ると「タワケ」だと。岐阜県の大垣も「タワケ」でした。それが、滋賀県米原町に行くと、「アホ」に変わります。どうやら、その境目が関ヶ原あたりだと見当をつけました。

なるほど、関ヶ原ねぇ。とまぁ、普通だったら15分程度の尺の中で終わるハズですが、MC上岡龍太郎のメガネの奥がキラリと光ります。

「それでは、バカとタワケの境界線は?大阪以西はアホなのか?そもそも日本全国では、どうなのか?引き続き調べなさい」

その後、福岡では「バカ」で、アホバカの境界線が西側にもあることが分かり、盛り上がりを見せます。

この話、実は民俗学者である柳田國男氏が、その著『蝸牛考』で展開した方言周圏論に重なるもので、言語学的にも大変価値が高いことが分かりました。つまり、言葉は京都を中心として同心円状に伝わっていくということ。蝸牛とは、カタツムリのことで、デデムシ(近畿)→マイマイ(中部・中国)→カタツムリ(関東・四国)→ツブリ(東北・九州)→ナメクジ(東北北部・九州西部)と変化したと言います。なるほど。

 

この企画は、テレビ界のビッグタイトルを総なめするほどの評価を受け、その後の高視聴率長寿番組へと繋がっていきました。

それにしても、柳田氏はカタツムリなんかに目をつけたものの、アホバカには気づかなかったんですね。実に面白い。