ファミレスに行ったとき、本当はじっくりメニューを見ていたいのだけれど、ウエイトレスに「この人、優柔不断なのね」と思われたくないので、オススメっぽい表記のものを10秒で選んでいます。
ファーストフードなんかでも、いろんな疑問を質問せずに「これ、ください」と無難な選択をします。冒険できません。なんでしょうね、圧迫面接みたいな店員の態度。笑顔の裏に潜む早くしろオーラを感じてしまうのです。うーん、スターバックスって、コーヒー以外のメニューはどうなっているんだろう? ゆっくり読みたいなぁ、メニュー。
シリーズがどんどん続いている長寿ドラマが、松重豊主演の『孤独のグルメ』です。
個人で輸入雑貨商を営む主人公が、仕事の合間に立ち寄った飲食店のグルメレポート。料理の蘊蓄を語ることなく、ひたすら注文して食べるだけなんだけど、ポイントはメニューを見続けるところにあります。なかなか頼まずに、ゲームプランを練るところを魅せているのが斬新です。胃袋は一つですからね。
ところが、188センチの巨漢・松重氏は二人分以上と思える量を注文することで、尺を埋めていきます。上海五目焼きそばと空芯菜炒めと海老マヨネーズに四川麻婆豆腐、卵スープ。締めに広東風チャーハンでデザートが杏仁豆腐なんてのが当たり前で、これを烏龍茶で流し込みます。どうやら、役の上では下戸らしい。58歳だけど痩身ですから、こんな食生活でも糖尿や高血圧と無縁なんでしょうね。羨ましい限りです。
つまり、松重氏は視聴者ができないメニューのガン見、昼食なのに財布を気にせず注文、病気を気にすることなく欲望の赴くまま食べまくるという夢を番組で具現化させました。
お店からすれば、新しい広報戦略です。発明だねぇ。