都会のネズミと田舎のネズミ

時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。

電王戦ファイナル

大学の将棋部には、運動部と同じように対外試合があります。
中でも年に2回行われるリーグ戦は、一部二部の入れ替え戦方式の大切なイベントで、各校7人ずつが戦い、それぞれの勝ち点を争います。
その昔、我が校のエースKは、高校の全国大会団体戦優勝の実績もあり、大事なポイントゲッターでありました。
宿敵W大学とは各局とも熱戦となり、3対3となって、最後に残されたのが大将戦のKの対局でした。
大学将棋の試合会場は、校舎の教室が使われることが多く、机を並べて行うので、対戦結果がすぐに伝わってきます。
3対3で、自分の勝負に運命がかかっているのは充分に承知の上で、いつにも増してプレッシャーが。
局面を有利に進め、相手の王様の詰みを読みきったKは、読み筋どおりに手順を進めます。
周りで観戦していた学生たちも、勝利を確信し、負けを認めざるを得なくなったそのとき、何とKは、最後の詰ませる一手、相手の王様の上に金将を動かす瞬間に、駒を成った(裏返した)のであります。

  「エーッ!!」

将棋のルールに金が成るっていうのはありません。
そもそも裏側には、何にも書かれていない、のっぺらぼうです。
しばらくして、相手側の観戦者が大きな声で叫びます。

  「反則だ。勝った、勝った!」

紅潮するK。駒からは手を放していないと、弱々しくアピールしていますが、うちらの学校は、そういう話に淡白な人間が多く、相手側の主張(反則)が全面的に認められます。
いやぁ、見たことも聞いたこともないんです、金が成るのって。
悪いのは、こっちです。
向こうに何の非はない。
だけど…
粋じゃない、野暮なんです。
勝ったほうは、騒がないでもっと恥ずかしそうにしてほしい。
そんな風に考えていました。


昨日行われた将棋の『電王戦ファイナル』は、コンリュータとプロ棋士が2対2で最終局を迎えました。
プロ側の最後の砦は阿久津八段。
対するコンピュータ『AWAKE』の開発者は巨瀬亮一氏で、若いころ奨励会(プロ棋士の養成機関)に所属していたという変り種です。
この手のプログラマーは、将棋をほとんどやらない人が多いのが実態なのです。
コンピュータ理論を支えているのが評価値という今までにない概念で、運動エネルギーと位置エネルギーを数値で表したような感じ。
そういう結果から結論を導くような手法って、リアルの将棋をやっていた人には浮かびません。
そこのところ、プロ側が苦戦している原因と言えるでしょう。
で、阿久津八段は、今から一ヶ月ほど前に、アマチュア棋士が『AWAKE』相手に発見した手順を踏襲し、まんまと同じ局面に誘導され、怒った巨瀬氏が本格的な闘いが始まる前に22手目で投了したという次第です。
正々堂々と勝負していないというのが、開発者の言い分であり、普通の流れに持ち込めば、絶対の自信があると。
もっと言えば、こんなに早く投了したのは、開発者が養成期間に所属していたけれど、途中で挫折した過去を持っていたのも関係あるでしょう。
これに対し、プロ側はコンピュータの強さを認めながらも、人間と違う機械がゆえの欠陥を探し出し、その点を徹底して突いたという理屈。
異種格闘技戦は、それなりの戦い方があるというのです。

確かに、過去の闘いの中で、がっぷり四つに組もうとした三浦・屋敷・森下九段は、まともに弾き飛ばされた印象で、勝利を収めた棋士は、半端なく相手の弱点を研究していました。
将棋は勝つことこそが目的なのか、内容にこだわるのがプロなのか?
そういうのって、人によって違う価値観なんだなぁ.
アントニオ猪木モハメド・アリの闘いを思い出しました。