子供のころ、プロレスが流行ってました。
鉄の爪フリッツ・フォン・エリックだとか吸血鬼ブッチャーだとか殺人狂キラー・コワルスキーだとか、それはもう怖かったです。人間じゃありません。
悪魔を見ているような、そんな感じは白黒テレビだからこそ、成立していたように思います。
インドの猛虎タイガー・ジェット・シンの場合、完全に目がいっちゃってました。
それに、サーベル持って歩き回るなんて、銃刀法違反でしょう?
覆面レスラーの入国審査はどうするのかと並んで謎でした。
子供たちの間では、当然のように、プロレスごっこが流行ります。
なんなんでしょうねぇ、アマチュアなのにプロレス。
薄々、気づいてはおりました。ショーだってこと。
だから、コブラツイストなんて、技をかけられる方も協力したりする。
この呼吸が、プロレス。ガチンコのアマレスにはありません。
だけど、やってることは喧嘩のシュミレーションでもあるので、ちょっとしたことが大怪我のもととなります。私の場合、後頭部を八針縫いました。勲章です。
加害者のキシダ君は、お母さんと一緒に泉屋のクッキーを持って、誤りに来ました。
「そんな、お互い様ですから」とかなんとか言って、嬉しそうにクッキーをほうばっていた私の母が印象的です。菓子を好んで人を憎まず。プロダクションの社長みたい。
この遊びには役割があって、帰国子女で身体の弱いヤナギサワ君はレフェリーが専門でした。
彼が行うカウントは、「ワン、トゥー、ス(th)リー」と発音します。
水前寺清子が、「人生はワンツーパンチ」って歌ってたころだから、彼のネイティブ・イングリッシュは尊敬の念で迎え入れられたものです。「やっぱ、違うよな~、ヤナギサワ君は」
ある一定の年齢を超えた人にとって、英語の日本語表記が理解できなくなります。
だから、ヴァイオリンはバヨリン、ティファニーはテファニー。
ワールドカップの日本代表には、見たことのない名前が並びます。
呂比須、三都主、そして闘莉王。
トゥーリオだって。
20年前には、そんな発音、日本語になかったんだけどなぁ。
ことばはどんどん増えているのであります。