キムタクの『HERO』を観ていると、検事という人が正義の味方で、自分の信念に基づいて貫いていくというところが勧善懲悪の水戸黄門であります。
実際には、業務に追われて一つひとつを精査する時間がなく、終わらせることこそが能力だとする評価らしいんだけど。
考えてみれば、偏差値エリートとして勝ち抜いた法曹関係者は評価こそが価値であり、ルールに基づいてどうあるべきかを判断するのは、当然の習性と言えるでしょう。
このあたり、基準が違っている。キムタクっぽい上昇志向のなさは、エリートの思考回路にないのであります。
そんな空気をまとっているのが、柚月裕子の佐方検事シリーズです。
主人公の佐方貞人検事は、組織の論理にお構いなく、自身の正義を貫きます。
『検事の信義』(角川文庫)は、シリーズ四作目。
こういう検事がいると、上司や同僚にも火の粉が降ってくるので、なかなかやっていけるもんじゃないんだけど、そんなわけないだろうを貫けるのが、作者の表現力です。
いいですねぇ、正義感。安定の88点です。