夏井先生のおかげで俳句がブームとなっています。
わずか17文字に込めた知的な遊びは、クールってことなんでしょう。ツイッター世代にウケる短さが魅力です。
もう少し踏み込むと、和歌の世界が広がります。三十一文字(みそひともじ)では、14字多く使えるのが大きい。
昔の知識人たちは、サラッと聞いただけではわからないような意味を込めて、言葉のやり取りをしていました。今で言えば、大喜利です。
落語に出てくる太田道灌の逸話に、鷹狩りの際に豪雨に合って雨宿りのため民家に立ち寄り、蓑笠を貸して欲しいと頼んだところ、そこの娘が「七重八重 花は咲けども 山吹の 実の一つだに なきぞ哀しき」という古歌になぞらえて、雨具(蓑)がないことを仄めかしたのだけれど、学のない道灌は、そのことが分からず、家来から説き明かされて、自身の不明を恥じたというのがあります。
分かりませんよね、そんなの。
だけど、それでも分かれというのが、当時のたしなみ、教養とされていました。
和歌にある修辞法として、掛けことば・縁語・見立て・折句・物の名などが挙げられます。
折句なんぞは、アイウエオ作文と似てますが、字数制限があるところが違う。掛けことばはダジャレですね。こうして見ると、俳句や和歌のジャンルがお笑い芸人と親和性が高いことが分かります。
さて、本日の推薦図書は『出版禁止 死刑囚の歌』(長江俊和著・新潮文庫)です。
最初の50ページくらい、「なんだこれ、クソつまんね〜な」と思い、読むのを止めようとしたのですが、あにはからんや、「フェイクルポルタージュ」という手法に戸惑っていた私が悪いと気付かされました。小説は奥が深い。
ネタバレになるので、これ以上は書きませんが、う〜ん、実に斬新でした。マイッタ。素晴らしい。道灌に同感です。93点。