都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

無明

普通の作家だと、大体時速60ページで読み進めるのが私のペースです。決して速い方ではありません。だから、文庫本を一冊読むのに三日ぐらいはかかってしまいます。そういうのって、時間がかかるほど、感動が薄くなる。読書が苦手だという人は、そこのところ、大いに関係あるでしょう。逆に、本好きの人は速読が得意です。なので、読書ジャンルの上級者と下級者の実力差は、どんどん開いていくのです。将棋と似てるかも?

そんなゆっくりな私でも、今野敏の作品だと時速100ページ近くにメーターが跳ね上がります。

彼の文体における文節が極めて短いことと、登場人物の会話がやたらと多いため改行だらけで、ページの中に占める余白が大きいことが理由であると思われます。時速100ページの作品は、一日での一気読みが可能であり、それだけ満足度が高くなる。計算してるんですかねぇ?

 

『無明』(今野敏著・幻冬舎文庫)は、内藤剛志が演じるテレビドラマでもお馴染みの樋口顕シリーズですが、黒川博行の後で読んだからでしょうか?胸がすく正義の味方の警察官でありました。いやいや、久しぶりの今野敏でしたけど、やっぱりスゴいです。

一つだけ不満なのは、タイトルです。無明とは仏教用語で「存在の根底にある根本的な無知」という意味だそうで、十二因縁では「すべての苦は無明(迷い)を原因とする煩悩から発生し、智慧によって無明を破ることにより消滅する」と説かれています。ねー、わけわかんないでしょう?

今野作品は、この手のタイトルが非常に多く、こだわってるんだかいないんだか不明ですが、今ひとつ話題になりにくい原因になっているような気がします。にしても、終盤で上司に向けて啖呵を切るやりとりは、ホントにスカッとします。オススメの一冊です。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 19点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点

【読後感】爽快感・オススメ度 20点

【合計】92点