「一死満塁で打席に立った打者は、どういう意識でいればいいか?」
野村監督は、選手とのミーティングでこういう話をするんだそうです。
もちろん、ホームランでも打てばいいんですが、そんなもん狙って打てるもんじゃありません。
たいがいの選手は、追い込まれるまで高めに的を絞り、外野フライを打ちますと答える。
そうですね、ほとんどの解説者もそんなようなことを言ってますから。
だけど、犠牲フライの日本記録(113本)を持つ野村監督は、それが簡単でないことをよく知っています。
そこで、彼はこんなことを言います。
「右側に当たりの弱いゴロを打って、全力で走りなさい」
すごいですねぇ、考えている人は。
投手が低めに球を集めてくるから、ゴロは打ちやすい。
これを強く引っ張っては、ゲッツーの可能性が強くなります。
だから、弱い打球を打てと。
ヒットを打てと言われるよりも、うーんとラクになります。
ところが、中日の落合監督は、もっとすごいことを考えてました。
「初回、ノーアウト満塁で、バッターは四番。どういう意識で打席に立つか?」
似てるけど、ちょっと違います。
ノーアウトだし、四番打者というのも。
正解は、引っ張ってショートゴロを打ち、ダブルプレイになる、です。
これで、一点が入る。強い打球は、ヒットの可能性もある。
大事なのは、とにかく一点をもぎ取るということ。
なるほどねぇ。
いやぁ、驚きました。
併殺打でホメられるなんて、想像ができないなぁ。
指揮官が卓越した理論を持って、冷静に試合を進められるのは羨ましい限りであります。