それで、モニタリングコンテストの話ですが、部門目標を10位と下げられたものの、そんなこと端から考えちゃいません。
こうなりゃ意地です。
ほかのことはともかく、これだけは達成しよう。
部下とのミーティングでは「これはプライドの問題である」と情に訴え続け、アフター5でも、いろいろ誘い出しては「何が大切なことか」をいろんな事例を交えて熱く語りました。
私の任されていたセクションは、病気になったお客様からの請求連絡を扱う仕事で、正確な受答えは当然として、それ以上に安心していただく。さらには、早く治ってもらいたいというようなホスピタリティマインドが必要なのです。
だから、技術を上げるというよりも、意識を高めることが大事なんですね。
当時、35名の部下のうち7名が派遣社員でした。
派遣社員は業務が絞り込まれているため、受信件数が多く、重要な戦力です。
しかしながら、「ハケンさん」という呼称が差別的な意味合いを持ち、すべての情報の共有化ができない、言わば部門内に業者さんがやって来ているような、そんな存在にしておりました。
何か問題があっても、直接本人に注意することなく、派遣元へクレームとしてジワッと伝わる。
これでは、いいコミュニケーションが生まれるハズありません。
そこで、リーダー格の社員を集め、とにかく目標を共有すべく、あらゆる情報を社員と同じように提供し、また、「ハケンさん」という呼び方を禁止して、名前で呼び合うように徹底しました。
個別のスキルについては、面接を何度も繰り返し、具体的な電話記録から改善点を指摘しました。
このとき大事なのは、各人のストロングポイントを加えること。
アラ捜しをしているのではないことを分からせるためです。
お客様からのお礼状は、担当者の名前も含めて、全員に開示しました。
誰でもホメられたいと思っており、それが患者様やその家族からのものであれば、嬉しさもまた格別です。
そして、仲間に対しての自尊心も刺激するわけです。
そして、一番大切なことは、「おはよう」とか「ありがとう」あるいは「申し訳ない」などの感情を交えた挨拶語を発するときに、必ず頭を下げること。
これが重要なんです。
プロの電話は、テレビ電話みたいに相手の表情が浮かぶもの。
だとすれば、お辞儀ナシの挨拶なんて、あり得ないわけです。
さらには、部門内の雰囲気を締まったものにします。
そう、電話というものは、受話器の向こう側にいるお客様が相手ですが、同時に部門内の仲間にも聞かれており、評価されているのです。
そのことをもっと意識しようってことでもあります。
そのほか、毎朝の朝礼で「私が印象に残ったサービス」というテーマで一分間スピーチをさせたり、NTT主催のコンテストに参加させたり、前年度の成績優秀者の模範テープを聞かせたり、まぁ考えられることは何でも実行に移しました。
結果は、当然のごとく一等賞です。
ほかの部門で、そこまで本気になったところはありませんからね。
全員で飛び上がって喜んだのは、言うまでもありません。
目標っていうのは、そういうものだと思います。
理想マイナス現実イコール問題であって、この問題を一つひとつ潰していけば、理想を実現させることができるのです。
企業がお客様から長く愛され続けるには、理想を失ってはいけない。
今でもそう思っています。