国内のプロ野球よりも、大リーグに興味がある人が増えているような気がします。
それは、日本選手のトップクラスが流出したこともありますが、NHKがBS放送で連日放映していることが大きいでしょう。
プレーを観るから楽しいのであって、結果を字面で追っても興奮できませんからね。
少し前までは、ドル箱の巨人戦放映権が、一試合一億円あるいはそれ以上だと言われていました。
つまり、セ・リーグに所属していれば、年間26試合前後を戦えるわけで、その半数は主催ゲームだから、相応の放映料が入ってくる仕組みです。
このことが、セ・パの交流戦が実現できなかった理由であり、ファンよりも球団の都合によって動いてきた球界の実情がありました。
土日なんか、デーゲームのほうが親子観戦にはいいんだけど、それだと視聴率が取れないから、放映料が下がってしまう。
だから、巨人戦はナイターってのが、球団の都合だったのです。
これに対し、NHKはBS放送のキラーコンテンツに据えました。
朝のあの時間帯は、男性の退職後高齢者にとって、ゴールデンタイムですからね。
最近、画面も大きいし。
そして、その世代は、サッカーよりも野球が普通なのです。
このように、大衆娯楽としてのベースボールは、マスコミの拡販に乗って、戦略的に使われてきたのであります。
『球界消滅』(本城雅人著・文藝春秋社)は、そんな球界の未来予想図を描いた秀作です。
セ・パ十二球団が四つに統合されて、大リーグの傘下に入る。
そんな絵を描くのが、東都新聞社の京極四郎で、それを操るのがハーバード大出身の牛島輝也。
登場人物のほとんどを現実の誰かになぞらえて、ストーリー展開していくので、まるで、ノンフィクション小説であるかのようなリアリティは、著者が一流のスポーツ記者だったことに拠ります。
架空のものでありながら、興奮してあっという間に読み終わりました。
オススメです。