都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

カウント論①

野球のカウントはストライクとボールの組み合わせで12通りあります。

それぞれの状況によって、考え方が変わりますが、まず、打者目線で見てみましょう。

基本的には、ストライクの数によって狙い球を絞ることで、確率を高めているのです。

例えば、0ストライクのときは、球種とコースの両方で狙いを絞り込みます。1ストライクであれば、球種かコースかどちらかのヤマを張ります。2ストライクに追い込まれると、来た球に対応せざるを得ず、当てにいくような打撃が多く見られるのです。

今季の12球団合計のカウント別成績を一覧にしました。

 

0ー0 6,349打数 2,012安打 258本塁打 打率.317 

1ー0 3,831打数 1,283安打 176本塁打 打率.335 

2ー0 1,176打数   386 安打   67本塁打 打率.328 

3ー0      82打数   34安打   8本塁打 打率.415 

0ー1 5,079打数 1,576安打 121本塁打 打率.310 

1ー1 5,640打数 1,800安打 173本塁打 打率.319 

2ー1 3,031打数 1,006安打 118本塁打 打率.332 

3ー1 1,060打数    352安打   59本塁打 打率.332 

0ー2 4,987打数    767安打   36本塁打 打率.154 

1ー2  10,576打数 1,756安打   83本塁打 打率.166 

2ー2 9,512打数 1,783安打 104本塁打 打率.187 

3ー2 5,609打数 1,145安打 101本塁打 打率.204 

 

初球のカウントで、一番ホームランが出ているところからも、狙い打ちされていることが伺えます。

3ー0では、一球見送るのがセオリーだということも分かります。ヒットも四球も出塁の点では同じ価値なので、それ以上の結果を出さないと意味がないからです。1ー3でも同じ傾向が読み取れます。

一方で、2ストライクに追い込まれると、打者の分が悪くなります。

初球の打撃成績を個人別に見てみましょう。打撃機会が多い両リーグの上位10人です。

 

1位 高部(ロッテ)96打数 33安打 打率.344 

2位 柳田(ソフト)87打数 31安打 打率.356 

   小園(広島)87打数 29安打 打率.333 

4位 岡本(巨人)75打数 24安打 打率.320 

5位 佐野(DeNA)73打数 31安打 打率.425 

6位 丸(巨人)72打数 28安打 打率.389 

           近本(阪神)72打数 26安打 打率.361 

8位 中野(阪神)70打数 26安打 打率.371 

9位 佐藤輝(阪神)69打数 24安打 打率.348 

10位 桑原(DeNA)65打数 20安打 打率.308 

 

初球から打っていくということは、読みがバッチリ当たっているということで、当然に自身トータルの打率より好成績となるハズです。

実際、ベスト10に名を連ねる各打者には、3割5分を超える選手が多く、なるほどと思わせます。

レギュラークラスの中には、吉川(巨人)52打数11安打で.212 、中村(西武)40打数5安打で.125 と情けない結果の選手もいましたが、これは例外。逆に、打席数こそ少ないものの、村上(ヤクルト)43打数19安打、中田(巨人)47打数21安打、サンタナ(ヤクルト)26打数12安打、ソト(DeNA)46打数21安打、岡林(中日)55打数24安打、宗(オリックス)62打数28安打、吉田正オリックス)45打数20安打、周東(ソフト)44打数20安打、三森(ソフト)49打数21安打、中村奨(ロッテ)45打数20安打等は、4割を大きく上回る成績を残しています。

配球を読んで思い通りに打てるってことが、レギュラーへの道だと言えるでしょう。

(つづく)

   

 

背中の蜘蛛

中国には、居民身分証という16ケタのマイナンバーカードがあって、外出時の携帯が義務となっています。

交通機関を利用する際やホテル宿泊、銀行送金時などに提示することを求められるので、犯罪抑止にも繋がっているように思います。

反面、2億台(日本の40倍)と言われる防犯カメラと合わせ、常に監視されているような息苦しさがあります。

このあたり難しいところだけど、14億人を超える民を合理的に統治するためにと割り切っているんでしょうね。

日本では、プライバシー保護が優先されており、公権力が捜査のためにズカズカ入り込んでいくのには、高い壁がいくつもあるようです。

『背中の蜘蛛』(誉田哲也著・双葉文庫)は、警察の捜査手法をテーマとした野心作です。

事件が立て続けに2件起きた後、別のストーリーが始まったごとく、わかりにくい描写が延々と続きますが、そこに多くの伏線が張られているので油断なりません。読んでいて苦しいんだけど、我慢が必要です。富士登山の感じ。

作中でこんなことを言っています。

「我々の生活は、サイバースペースに飲み込まれてしまっているといっても過言ではない。目に見える景色にさほどの変化はなくても、この30年、40年で我々が生きる世界は、大きく様変わりしてしまった。その激しすぎる変化に、今は人間の倫理観が追いつかなくなっている」

倫理観ねぇ。運動会で撮った写真をネットに挙げたりすると、個人情報の見地からクレームがついたりする。場合によっては訴訟にも。そういうとこなんだよなぁ。高齢者が付いていけなくなるのは。

うん、本作における問題提起は、いろいろ考えさせられました。中だるみが残念で90点。けど、読後感は良かった。

 

バカと無知③

法務大臣で忘れられないのは、小泉内閣の時の南野智惠子という女性です。

看護婦さんからキャリアアップして、参議院比例区で当選。バリバリの厚生族でしたが、何故か畑違いの法務大臣に就任しました。国会答弁では、質問の度に後ろに控えた官僚のアドバイスを受ける体たらくで痛々しく、オドオドした様子が気の毒で、ツッコむ気にすらならなかったのを思い出します。論功行賞って、こういうことなんだなぁと。パートのおばちゃん、国会へ行くみたいな感じでした。

なぜ、こんな人事がまかり通ったかというと、法務省のトップなんて、誰でもよかったからです。持ち上がった書類にハンコを押す仕事だから。生半可な知識では、官僚と会話になりませんのでね。

葉梨康弘法務大臣の「死刑ハンコ」は、そういう状況の中で、自身の能力が不完全燃焼していることに対する自虐的な発言でした。私は大した話ではないと考えていましたが、この機を逃すまいと、鬼の首でも取ったように攻撃的になるのがキャンセルカルチャーです。山際大志郎の方が、よっぽど悪質だと思うんだけど、あちらは辞任で葉梨康弘が更迭だなんて、バランスがおかしい。岸田的には、言質を取られない方が、失言よりもエラいとの判断です。ますます自分からは何もしなくなるんでしょうね。地蔵総理。

 

橘玲の『バカと無知』では、ダニング・クルーガー効果についての記述があります。

それは「バカの問題は自分がバカであることに気づかないことだ。なぜならバカだから」ということ。認知能力の低い子供は、何を知らないかを知らないので、フィードバックを受けてもどうしていいかが分からないわけで、なるほど、いくら教えてもそれ以上に理解が進まず手応えが感じられないってのは、教育関係者の間で周知の事実です。

いや、それより問題なのは、認知能力が高いと思われている人が、自分は賢いんだと思い過ぎることかもしれません。結果として、自分が知らないということに気付かず、いつの間にか浮き上がった存在になっているような話。うん、こっちの方がヤバい。刺さりました。ダニング・クルーガー効果かぁ。

バカと無知②

古代ギリシャの哲学者であるソクラテスは「無知の知」という言葉を残しています。自分が何も分かっていないことを知っているという意味だそうで、さすがは哲学者、深いねぇ。

松下幸之助は「わからなければ、人に尋ねることである。どんな人のどんな意見にも、おのずから得るものがある。お互い知識のないことを恥じるより、教えを乞わないことを恥じたい」と言いました。誰に習ったんでしょうか?これも卓見です。

最近の若い人は、知らないことを必要以上に恥ずかしいと思うんだそうです。

逆に、知らないけど堂々としていると芸になる。珍しいですからね、そういう人。

そこに目をつけたのが『呼び出し先生タナカ』です。高学歴芸人のアンガールズ田中卓志が先生役で、アホ丸出し芸人をイジりまくる。昔、『めちゃイケ』で岡村隆史がやっていたのと全く同じ内容ですが、制作が同じ局なのでいいとの判断でしょうか? 『ヘキサゴン』もそうだけど、フジテレビはこの手の企画がお好きなようです。

で、横川尚隆や村重杏奈、島太星らの知識がないことが売りのタレントが、ポジションを獲得しました。

難しいのは、正解が分からないだけじゃダメで、上手くボケながら間違えること。やり過ぎると、明石家さんまの『ご長寿クイズ』みたいになるので、制作側のセンスが求められるのです。恥じらいがなくなったら、替え時なんでしょうね。見極めが大事です。

 

橘玲の『バカと無知』では、近年の脳科学の研究で、自分より下位の者と比べる下方比較では報酬を感じ、上位の者と比べる上方比較では損失を感じるとしています。脳にとって、自分より劣った者は報酬で、優れた者は損失だということです。

なるほど、おバカ芸能人を見ると安心し、ホリエモンとかひろゆき、あるいは橋下徹みたいな人に対しては、正義の名の下にやたらと粗探しするのが最大の娯楽となったと言います。これは国内だけでなく世界的な風潮で、過去の不適切な行為を指弾するキャンセルカルチャーとかあらゆる差別的な言動を許さないポリティカルコレクトネスなんて言葉が生まれました。

そういう社会でインターネットの果たす役割は大きなもので、過去を消すことが難しい以上、公職に就こうとする者は、どんどん少なくなっていくのであります。

(つづく)

 

バカと無知①

YouTubeの番組の中には、テレビでは絶対に表現できないような過激な内容のものがあって、だからこそ面白いのがあるわけです。

ホリエモンは、いち早くテレビ局の過剰な自主規制に気付き、自身のチャンネルに舵を切りました。裸の王様で発信を続ける少年を見るような感じです。好き嫌いじゃなくて、意見の多様性を見るってこと。

最近のヒットは、高橋洋一との対談で、人を見下したような二人の物言いが面白い。

https://www.youtube.com/watch?v=ll4v_9LygGI&t=633s

スゴいですよ、この二人、世の中はバカの方が多いと断言していました。

ホリエモンは、小学校の国語のテストで45分かけて50点取れないのはおかしいと。

いやぁ、そのとおりです。国語ですからね。で、ホリエモンはどうしてそんな人がいるのか理解できなかったけれど、最近Twitterを見ていて分かるようになったんだそうです。つまり、140文字以上の文章が長過ぎて読めないんだということです。

なるほどねぇ。

それと同じことが書かれているのが『バカと無知』(橘玲著・新潮新書)です。日本人の3人に1人は日本語が読めないと。

ただし、この傾向は我が国に限ったものでなく、先進国の成人の約半分が簡単な文章が読めないと言うのです。これでは選挙なんかやったって、正しく選ばれるわけにはいきません。だから、本当は投票率が低ければ低いほどいいなんて、ブラックジョークがまかり通るようになる。なんて、書かれてました。

この本、まだまだ面白いので、明日へ続きます。

(つづく)

リバー

普通のミステリー小説は、大体400ページ前後に収まっています。

400字詰めの原稿用紙で400枚ぐらい。それは、出版社がその量を求めてくるからです。

だから、600ページを超えるような大作には、なかなかお目にかかれません。飽きますからねぇ、内容がないと。

しかしながら、それだけの場所を与えられると、大勢の登場人物が躍動して、時間の幅もたっぷり持たせることができます。

なので、いい作品も多い。アラカルトとフルコースの違いのようなものです。

ただし、読み手にもそれなりの体力と技量が求められます。

単行本のオーバー600ページは、重量を伴うので、読み始める前は潜水をするみたいに息を大きく吸い込みます。

 

奧田英朗の最新作『リバー』(集英社)は、648ページ。群馬県と栃木県にまたがる河川敷で起きた連続殺人事件に容疑者が3人現れます。それぞれに、暗い背景を持ちながら、なかなか決定だとなるような尻尾を出さない。こういうとき、警察の所管が分かれていると情報共有がされにくいってこともあるでしょう。被害者遺族にしても、犯人が逮捕されないことで悶々とするし、知られたくないことをマスコミに書かれて一方的に傷つくってのもあります。そういうのの描き方がウマいんだなぁ、奧田英朗。そりゃあ600ページ必要です。

容疑者それぞれの暗い部分も全く違うし、追う側の警察や新聞社、それに被害者家族にしても正義感が同じではありません。人はいろいろです。

ってことが、ギュッと詰め込まれています。最後がちょっと物足りなかったけど堂々の90点です。

塩狩峠

そこまで言って委員会』の読書の秋スペシャルで、元衆議院議員の宮崎謙介が『塩狩峠』(三浦綾子著・新潮文庫)を薦めていたので、早速取り寄せて読んでみました。

キリスト教の信者となった主人公が、生まれつき足が不自由な上、結核を患った友人の妹に恋心を抱きながら、最後は大勢の乗客を救うために自らの生命を犠牲にしたという実話に基づいて描かれた物語です。

 

「汝の隣人を愛せよ」とか「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」とかが、キリスト教の教えについて、何となく聞いていた話ですが、一方では、そんなの無理だと半ばギャグのように捉えておりました、キリスト教。なんか、無理してるぞ、こいつらみたいな。

毎週のように教会へ通うってのも、どうもねぇ。

南無阿弥陀仏」と唱えるだけのインスタント性に比べると、重い、重過ぎるというのが印象です。

だけど、この小説は中高生の推薦図書となることが多く、知る人ぞ知る名作と讃えられていました。

無償の愛ねぇ。キリスト教がそれだけ浸透しているならば、戦争なんて起こるハズないと思うんだけど、なんだかなぁ。

私的には、78点でした。真面目の度が過ぎて、笑いがない人間関係は、疲れてしまいます。