中国には、居民身分証という16ケタのマイナンバーカードがあって、外出時の携帯が義務となっています。
交通機関を利用する際やホテル宿泊、銀行送金時などに提示することを求められるので、犯罪抑止にも繋がっているように思います。
反面、2億台(日本の40倍)と言われる防犯カメラと合わせ、常に監視されているような息苦しさがあります。
このあたり難しいところだけど、14億人を超える民を合理的に統治するためにと割り切っているんでしょうね。
日本では、プライバシー保護が優先されており、公権力が捜査のためにズカズカ入り込んでいくのには、高い壁がいくつもあるようです。
『背中の蜘蛛』(誉田哲也著・双葉文庫)は、警察の捜査手法をテーマとした野心作です。
事件が立て続けに2件起きた後、別のストーリーが始まったごとく、わかりにくい描写が延々と続きますが、そこに多くの伏線が張られているので油断なりません。読んでいて苦しいんだけど、我慢が必要です。富士登山の感じ。
作中でこんなことを言っています。
「我々の生活は、サイバースペースに飲み込まれてしまっているといっても過言ではない。目に見える景色にさほどの変化はなくても、この30年、40年で我々が生きる世界は、大きく様変わりしてしまった。その激しすぎる変化に、今は人間の倫理観が追いつかなくなっている」
倫理観ねぇ。運動会で撮った写真をネットに挙げたりすると、個人情報の見地からクレームがついたりする。場合によっては訴訟にも。そういうとこなんだよなぁ。高齢者が付いていけなくなるのは。
うん、本作における問題提起は、いろいろ考えさせられました。中だるみが残念で90点。けど、読後感は良かった。