ホントはそんな人はいないのに、いるように思わせてしまうのが作家の力量です。
東野圭吾や今野敏など、作品の中での人物描写が秀逸で、いつの間にか登場人物に肩入れしてしまったりする。それこそが読書の醍醐味です。
ハードボイルド小説の誉田哲也もその一人。
女刑事である姫川玲子シリーズは、どれもが魅力的で文章のキレが良く、そのスピード感に驚かされています。
本日のオススメは、シリーズ最高傑作と言われる『ブルーマーダー』。
池袋を舞台に、ヤクザや中国マフィア、暴走族上がりの半グレなどの半社とされる人々が殺されたり、謎の失踪を繰り返すに至り、警察が組織を上げて、これに立ち向かうという話です。
バラバラに切られたカードが、時系列を無視して並べられているので、ストーリーを理解するのに戸惑いますが、これが誉田哲也の手法なので、慣れれば繋がっていくスピードが早まることでありましょう。逆に、その難解さが面白さを倍加します。
ただし、暴力シーンがかなりえげつないので、その点はちょっとマイナスです。90点。