昭和49年8月、東アジア反日武装戦線『狼』による三菱重工ビル爆破事件で、何の罪もない方々が大きな被害を被ったことがきっかけで、犯罪被害給付制度の必要性が論議され「犯罪被害者等給付金支給法」が制定されました。その後、地下鉄サリン事件が契機となって、犯罪被害者の置かれた悲惨な状況が広く国民に認識されたことに伴い、被害者に対する総合的支援を行うために『犯罪被害者支援室』が誕生しています。
経済的な問題を始め、怪我の治療や心のケア、再被害の心配、その後の捜査・裁判状況の説明など、被害者及びその家族を幅広くフォローしていく役割が求められています。
ともすれば、犯人逮捕を優先するあまり関係者の感情を損ねるケースもあるでしょうから、必要ですよね、そういう役割。
作家の堂場瞬一は、ここに目を向け、警視庁犯罪被害者支援課シリーズを展開しています。
『空白の家族』(講談社文庫)は、シリーズ7作目。
人気子役の少女が誘拐され、その父親は大規模な未公開株詐欺で有罪となった男だったことが分かり、事件は複雑に展開していきます。
ちょっと思ったのは、二つの指示命令系統を持つ担当者が同じ現場に居合わせた場合、なかなか協力的になれないだろうなってことです。
全く対等ではいられないでしょうからね。マウントの取り合いって言うか、支援課の方は後方に構えざるを得ず、難しそうだなと思います。
企業で言えば、社会貢献部署みたい。利益は生みませんからね。
さて、本作は誉田哲也の後に読んだこともあって、展開の遅さにイライラしてしまいました。それは、説明が過ぎるからではないでしょうか。その割に、登場人物のキャラクターに惹き込まれないのは何故か? うーん、83点。