都会のネズミと田舎のネズミ

時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。

ら抜きの殺意

以前、アカペラグループのプロモーションをしていたときの話、5声のうちのトップを担当していた女性は、言葉に対するこだわりが半端じゃありませんでした。

海外の曲を言語で歌うことが多いので、ネイティブに近い発音を目指すのですが、音に携わる仕事をしている人は、耳の性能がいいんでしょうね。英語はもちろん、フランス語だろうがスペイン語だろうが現地さながら。映画を見ているようでありました。

そして、それは日本語にも向けられます。助詞の「を」は「ウォ」、鼻濁音であるべき「が」は「ンガ」とこだわる徹底ぶりです。

私の周りにそんな意識で喋っている人はいないので、軽くショックを受けたものです。アナウンサーみたい。いや、私の父はスポーツアナだったので、敬語や慣用句など、正しい日本語についての教育的こだわりが平均以上であったものの、発音についてはアクセントまでで、仕事でないオフのレベルでは、「を」も「が」も普通でした。

うーん、そんなにいませんよね。ちゃんと喋ってる人。

 

一般の人で、ときどき見つけられるのが、「ら抜き」警察の人です。「さ入れ」警察は少ないけれど、「ら抜き」捜査官は結構いる。

そんな話を元に作られた戯曲が『ら抜きの殺意』(永井愛著・而立書房)です。

作者は若い頃、『ふたりっ子』『オードリー』などの脚本を手がけた大石静氏と行動を共にしており、自ら女優を演じていたこともある根っからの演劇フリークです。今は売れてないけど才能のある役者に寄り添うのが好きなんでしょうね。こういう人のこだわりってスゴイんですよ。それが、この作品。

通販会社に夜間の電話オペレーターとして、アルバイト入社した主人公が、実は中学校の国語教師です。ところが、その職場で使われているお客様対応の日本語が結構乱れていて、それを正そうとする物語。井上ひさし氏の『国語事件殺人辞典』を彷彿させるものでありました。

 

私のツボは、女性が男性と話す時と女性同士で会話する時は、ガラリと話法が変わる多重人格ぶりってとこで、なるほどこれは深い気付きだと得心しています。ぶりっ子っていうのは、女性からの発想であり、そんな話、女性はみんな知っていることなんだけど。うーん、見えていないものが見えると楽しいねぇ。

井上作品やつか作品に比べると、登場人物のキャラクターが振り切れていないので、83点。惜しい。

(この舞台はYouTubeで観ることができます)