都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

死にゆく者の祈り

去年末のブログで柚月裕子の小説を通じて教誨師(きょうかいし)という仕事に触れましたが、この任務をさらに掘り下げた『死にゆく者の祈り』(中山七里著・新潮文庫)に出会いました。

改めて言いますと、受刑者に対し道徳教育を行う宗教家が教誨師です。特に死刑が確定した囚人に向き合うのは相当の覚悟と経験が必要で、精神的にキツい業務だと思います。ちょっと古いデータですが、全国に1,480人(平成2年)だそうです。宗教家の総数は、115,000人ぐらいですから、ホンのひと握り、誰でもできるもんじゃありません。

物語は、教誨師である主人公が、大学時代のサークル仲間が死刑囚であることを見つけ、その犯した罪に疑問を感じて探偵もどきに事件を調べるという話です。そんなわけないだろうと思いつつも、白けた感じにならなかったのは、作者の人物描写が巧みで、単純な作り話に見えなかったからでしょう。

仕事には、それぞれが与えられたミッションがありますが、捉え方によっては、そのままでいいのかと自問自答することがある。それは、人によって違うかもしれません。ルールに忠実な人は、はみ出した行動に嫌悪感を抱くのではないでしょうか? だけど、そもそものルールがどうなのかと考えているタイプは、こういう破天荒ぶりが許せるんだと思います。

この展開は、賛否が分かれるところですが、私としては、作者の正義感を支持したいです。一気読みでした。88点。