警察の取り調べの様子は、刑事ドラマでさんざん見せられたけど、真剣勝負みたいなギリギリの状況では、違法まがいの強引な手法も取られており、賛否両論あるようです。警察も悪意の塊が相手だと、それを上回るような駆け引きが必要だと考えるわけで、ビル・ロビンソンのプロレスのようなルール遵守とはいきません。
狭くて暗い取調室に閉じ込めて、尋問する側は三交代のローテーションを組んで、緩急をつけながら追い詰めていく。飲食も自由にはさせません。カツ丼なんてのは、妄言のようです。とにかく、集中力を奪って計算や判断が効かないようにするらしい。一日8時間と制限があるものの、対面で詰められ続けると、精神状態がおかしくなるケースが多く、その隙を突いてちょっとだけ優しい言葉をかけると、コロッと白状してしまうってこともあるんだそうです。だけど、やりすぎると冤罪を引き起こすことにもなるようで…
『テミスの剣』(中山七里著・文春文庫)は、強引な取調べから起こった冤罪事件をめぐり、周囲の人間がその渦にどんどん巻き込まれていく話です。全くの部外者である私でさえ、正義感が揺らぐこともあり、正しいことが必ずしもいいことでないと、悶々としたりもしました。
小説でありながら、まるでドラマを見ているような描写力が素晴らしい。オススメの一冊です。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 19点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点
【読後感】爽快感・オススメ度 19点
【合計】94点