私立探偵を職業とする人って、どういう経歴なんだろう?
学校を卒業してすぐに、なろうと思うもんじゃありません。
おそらくは、その依頼のほとんどが浮気調査だろうし、あまり前向きなものが感じられない。そもそもその仕事に値段がつけにくいんです。成功報酬だと言われてもねぇ。逃げ出したワンちゃんを探せったって、そんなに貰えるわけがないし。
だから、クライアントはめちゃくちゃお金持ちが多くなる。『傷だらけの天使』の岸田今日子みたいなイメージ。
そして、警察にパイプがあるってとこが重要です。そうじゃなくちゃ、情報が限られてしまう。なので、元暴力団員だという筋もある。
私が人生の中で関わった探偵は、元警察官でした。いや、絶対にヤクザだと思ったんですけどね。保険会社時代に支払いトラブルで脅されて、あんまり怖かったから、総務部の警察上がりの人を連れて折衝の場に赴いたところ、同伴の元刑事は、一発で見抜きました。あれは、同業だと。なんでも、目で分かるんだそうです。私に対して威勢のよかったその自称探偵は、一発でおとなしくなりました。なんかカードゲームみたい。
警察を定年退職した総務部のおじさんは、何をしているかが分からず、存在感が薄かったんだけど、こういうときのためだったんだと納得です。保険会社は、三蔵法師御一行のようなスペシャリストを抱えた構成になっておりました。
『アウト&アウト』(木内一裕著・講談社文庫)は、元ヤクザの探偵が殺人事件に巻き込まれながらも、その人脈をフルに活かして、解決へと向かうストーリーです。妙に大人びた小2の女の子と80近い婆さんが本物の家族のように絡んでアクセントをつけるんだけど、そのへんの匙加減が絶妙です。ハードボイルド&バイオレンスの間に優しさが入り込む感じ。なんかスカッとしないのは、そういう中途半端な優しさが邪魔だったような気がします。イマイチでした。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 14点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 16点
【合計】77点