飲食店の経営者は、お客様の顔を覚えるのが基本だといいます。
二回目だって、覚えてくれていたら嬉しい。スナックのママだと、わざわざ名前を連呼します。キープしたボトルでもあれば、それに紐付けているのは当然のこと。そういうの、図形認識能力とでも言うんでしょうか?
私はその能力が完全に欠落していて、人間どころか車の車種をどんどん言い当てるような子供が不思議でなりません。犯人の目撃情報なんか求められても、まるで役に立たないでしょうから、呼び出しをくわないように静かに暮らしています。
ところが、警察組織には指名手配犯の顔を記憶して街角に立ち、群衆の中から逃亡犯を見つけ出す「見当たり捜査」という業務があるそうです。
それは、マスクをしていても見分けられる能力なんだそうで、トランプの神経衰弱なんて楽勝でしょう。
いやぁ、いろんな仕事があるもんですね。
相場英雄の最新刊『心眼』(実業之日本社)は、この見当たり捜査班にスポットを当てた物語です。
この仕事は、ただ立っているだけではダメで、情報に近づくためのいろんな努力が求められます。手配犯の顔を覚えるには、受験生の単語カードみたいな準備が必要だけど、その試験がいつ実施されるか(犯人といつどこで遭遇するか)は分かっていないので、ノイローゼに陥ることも。
近年、人工知能の進化で「顔認証」という技術が出ており、これとも闘っていかねばなりません。
ってな話が綴られております。
ストーリーは、なるほどなんだけど、陰気過ぎるキャラクターに思い入れることができませんでした。相場作品としては低めの83点です。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 18点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 15点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 15点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点
【合計】83点