都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

誘拐

ミステリーの世界では、誘拐にまつわる犯罪が、いろんな作家に表現されています。

その多くは幼児誘拐であり、被害者家族の背景を描くことによって、舞台が広がっていくようになっています。

幼児の年齢が小さいほど、犯人についての証言能力が低いので、生きて帰らせたとしても犯人側のリスクは低いのですが、それが上がるにつれて、面倒なことになります。大人が誘拐された場合、証拠を返却するようなものなので、殺されてしまう可能性が高くなる。逆に言えば、大人は誘拐向きじゃありません。グリコ森永事件以外は、記憶にないのが誘拐事件の本質です。

もう一つ、誘拐犯罪が成立しづらいのは、身代金の受取りが難しいからです。現ナマは、重いし嵩むので運び難いし、振込みでは足がつく。いや、これは知らないだけなのかも? どうなんでしょう? そういう意味でも、グリコ森永事件は鮮やかでした。株価操作ねぇ。

 

『誘拐』(五十嵐貴久著・双葉文庫)は、スケールの大きな物語です。

何せタイトルが大上段に構えた『誘拐』ですからね。なんの捻りもない。そこんとこ、ちょっと不満なんですけどね。

ターゲットが日本国総理の中学生の孫娘ってとこ、奇想天外でした。誰よりもガードが固い家。そして、誘拐した後の捜査の圧が半端なく強いってところが民間人とは違うところです。犯罪捜査の成否のカギは、人海戦術でもあるわけですから。

怨恨が理由であれば、容疑者の絞込みもたやすいのですが、誘拐が金目当てである場合、地取り艦取り以外の方法がありませんので、だからこそ人手が必要なのです。う〜ん、犯人側がカードを切らないと材料不足で動きようがないし、犯人側の人数が少ないほどに情報が漏れにくいってことを学びました。

いやぁ、面白かったです。なんと言っても読後感が良い。全ての登場人物に共感することができました。アッパレです。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 18点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 19点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 19点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 19点

【合計】91点