先月、アメリカの刑務所で史上最悪のテロリストであるユナボマーことセオドア・カジンスキーが獄死しました。
1978年5月から1995年にかけて、16件の郵便小包爆弾事件を起こし、3人が死亡、20人以上を負傷させた連続爆破犯です。96年に逮捕されるまで20年近く捕らえられず、アメリカで最も多量の爆弾を使用した犯罪者として終身刑とされていた人物でした。
普通、テロ行為には、政治的なことや金銭絡みの目的であるケースが背景にありますが、彼の場合は社会正義を訴えてのこと。
テクノロジーが世の中を不安定にし、人生を満たされないものにしているだけでなく、精神的苦痛を蔓延させている。だから、人類は野生に戻るべきだとの主張は決して受け入れられるようなものではありませんが、IQ167の彼からすれば、みんなが分かっていないってことになるんです。
社会へ警鐘を鳴らすためのテロ行為。
恐ろしい事件でありました。そして、逮捕されるまでに20年の月日が流れたのです。
『触発』(今野敏著・中公文庫)は、このユナボマー事件をもとに、描かれました。
朝のラッシュで混雑する地下鉄駅構内で爆弾テロが発生し、死傷者300名を超える大惨事となったことから始まります。
行為自体は決して許されるものではありませんが、実行犯にはそれなりの理屈があるわけで、自己を正当化しようと考えます。
自分に酔っている犯罪者には、つける薬がありません。だから、取り締まる側は、犯罪者の上をいく知能が必要であり、そういうときに組織の力が大事であると改めて思いました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点
【合計】81点