約束を守るかどうかの認識は、人によって大きく違うような気がします。
「ウソついたら針千本飲ます」なんて、それ自体が虚飾に満ちているので、ちょっと賢かったりすると、そんな約束は不当だと開き直ります。
その一方で、小学校の教科書に『走れメロス』なんて載せるもんだから、約束は絶対だと思う純粋な人もいる。
分かれますね、そのへんの解釈。薄っぺらい人と頑なな人と。そこに、親の教育ってのも大いに関わってきます。
『誓約』(薬丸岳著・幻冬舎文庫)は、暗い過去を持つ主人公が、暴力団に追われて逃げ延びるため、戸籍を買って整形し、新しい人生を歩もうとすることで始まります。その際の資金を娘を二人の男に惨殺され、ガンに侵されて余命幾ばくもない老婦人から、その犯人たちが刑務所から出所したときに復讐する約束で、取り付けました。その後、主人公は結婚して子供を授かり幸せに暮らしていたのですが、犯人たちが出所するに至り、暗転します。約束を履行せよとの謎の手紙が届く。過去を暴かれたくない主人公が、どんどん追い詰められていきます。一体、その黒幕は誰って話。
刑務所に入れられた犯人たちが出所するのは、10年以上の先の話であり、その頃には依頼主がこの世にいないので、そんな約束は反故にすればよいと軽く考えていたのですが、謎の人物から脅されて、八方塞がりになっていく。怖い話だわ。殺しの依頼の約束。まるで、針千本そのものでした。ちょっと冗長過ぎるのと、真犯人の挙動に共感できないとこがあって、76点止まりです。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 13点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 15点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 15点
【合計】76点