芝居が上手いとされる男優は、酔っ払った状態を見事に演じます。
酔い方は人それぞれとはいえ、素面のときとは違う変化がある。その微妙な違いを演じ分けるのは、他者に対する観察力と自分を俯瞰して見ることができる能力です。ワンパターンに陥ることなく、いろんな脚本に対応できる役者は、引っ張りだこです。堤真一や橋爪功、いいですねぇ。
女優の場合、泣くシーンで差が出ます。
大粒の涙がボロってのもいいですが、それ以上に崩れた顔が平気でいられるってとこが重要だと思います。泣いてるときに、美しさをキープしたままではヘンでしょう? 悲しみの表現は、ボロボロになるってこと。宮本信子や安藤サクラ、それに芦田愛菜は、ブスだと思われることを厭わず、体当たりで演技しているところを評価されるのではないでしょうか?
夏のクールで『この素晴らしき世界』(フジテレビ系)が始まりました。一介のパートのおばちゃんが、トップ女優の身代わりになるって話。『プリティウーマン』みたいなシンデレラストーリーになる予定のようですが、そのバカバカしさ加減が面白い。よく練られています。
主演の若村麻由美は、20年くらい前、謎の新興宗教の超デブな教祖と結婚した(その後、すぐ死亡)不思議な人でして、そのミステリアスさが不思議な魅力です。けど、美人を拭えないところが残念。もともとキレイな一般人が女優に変身した状態を、悪目立ちさせたメーキャップで繕っているのが惜しいんだなぁ。障害物競争で粉の中にある飴に果敢に挑戦するようなところがないと、大女優にはなれない、そう思いました。