都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

震度0

私の実家がある横浜・上大岡は、引っ越したばかりの昭和40年当時、丘陵を開いたばかりの宅地造成地で、いろんな企業の社宅や団地が競うように建設されておりました。

当時は、町名に続く住所表記が「字権現堂谷」となっていた程の田舎っぷりで、小学校への通学に片道30〜40分をかけていたのを思い出します。学校からの帰りは登り坂なので40分。おかげで、足腰がしっかりと鍛えられました。

 

自宅周辺の50世帯ほどが、父が勤務する会社が分譲した戸建て住宅です。なので、住民の生活レベルや文化・価値観がかなり似通っています。

世代もそう。父親が40歳ぐらいというのが多く、子供は小学生二人ってのが当時の平均的家庭でした。

そんな環境では、やたらと比べます。似ているからこそ、違いを求めて比べる。

特に、妻の方の意識が高まるんです。夫のポストだとか、子供の学校での成績。クルマもファッションも習い事も。

普通は、近所に住んでいる人をそんなに気にするもんじゃないと思いますが、同質の集団に属していると、めらめらと競争心が芽生えます。そういう人が多い。

 

『震度0』(横山秀夫著・朝日新聞社)は、警察組織の閉鎖性をえぐり出した物語です。
阪神淡路大震災の時期に合わせて起きた警察幹部の失踪事件をめぐり、キャリアとノンキャリアの上層部たちが、それぞれの立場を守ろうとしながら、虚々実々の駆け引きを行うという展開ですが、自己都合優先が剥き出しで、人間模様がドロドロしています。正義なんて後回し。その考えは、家族にも及んでいて、なんだかなぁです。行き過ぎた士農工商身分制度がそのまま残された感じでありました。

緊急時に備える意味なんでしょう。偉い人たちが暮らす官舎。職住接近の好立地に住まわせられます。特に、キャリアは二、三年で異動するので、そういう場所が必要でもある。家賃が相場の半分以下ってところが、決して高くはない給料の現物支給という暗黙の了解です。

それにしても、社内結婚が多い警察では、相互の利害関係が複雑すぎて、なかなか個々のキャラクターに入り込めませんでした。そして、そんなに偉くなりたければ、警察なんかに入らなきゃいいのにと思ってしまいます。震度0ねぇ。『臭い物に蓋』ってタイトルじゃないところがセンスなのであります。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 18点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 13点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 17点

【合計】82点