私が保険会社に入社してしばらくの頃は、高度成長の絶頂期で、株式投資も盛り上がっていました。
銀行金利が6%の時代、何を買っても株価が上がるもんだから、証券会社の友人たちも流れに乗って、派手な生活ぶりだったように思います。
だけど、当時の上司である課長代理が勤務中に証券会社と頻繁にこそこそ連絡していたのが悪いイメージとして残っています。受話器を右手で隠すように抑えながら、小声でボソボソやるもんだから、モロ分かりです。部下たちは、みんな知っていました。それでもやめられないのは、ギャンブルと同じような魅力があるからでしょう。こっちは逆に、株式の話全般に嫌悪感が増していく。そういうものです。
『ブラック・ヴィーナス』(城山真一著・宝島社)は、株取引の世界において、神格化されたエキスパートである謎の女「二条茜」をめぐる物語です。実際には、どうなんでしょうね、成功率。一億円が数日後に一億五千万円になるなんて話、ピンと来ませんでした。なんか不愉快です。
城山氏の作品は、最初に読んだ『看守の信念』と『看守の流儀』が面白すぎて、過大評価してしまったようですが、『相続レストラン』に続いて読んだ本作が、あまりに期待外れで、余計にガッカリした感じです。「このミステリーがすごい大賞」の受賞作らしいけど、その賞自体、なんだかなぁって思いました。
ファンの人にはごめんです。でも、合わないものは合わない。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 13点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 13点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 13点
【合計】70点