都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

沈黙法廷

大学は法学部で法律を学ぶ真似事をしておりましたが、条文の文章スタイルに全く馴染むことができず、その回りくどさに辟易しておりました。

理屈よりも情緒を優先させる思考形態だったことも、相性が合わなかった理由だと思います。つまり、理論的じゃないってこと。平たく言えば、アホでした。自覚のないアホ。今だったらいくらでも軌道修正できるんだけど、手遅れです。

それにしても、興味がないってことが、あらゆる上達の阻害要因となるということを今になって噛み締めております。教育で一番大事なのは、動機付け。知識じゃないというのを今さらのように思ったりします。

 

これも自慢にならないんだけど、法学部出身なのに、裁判を見たことがありません。その仕組みすら分かっていない。

だから、テレビドラマの木村拓哉堺雅人、あるいは竹野内豊の検察官や弁護士や裁判官でイメージを充当します。現実とは程遠いのにねぇ。

なので、学習性は薄い。作家や脚本家が上澄みをすくったようなシナリオはリアルから遠いのが何となく分かります。

と、ここへ一石を投じたのが佐々木譲の『沈黙法廷』(新潮社)です。傍聴人の立場から描いた法廷シーンは真に迫るものがあって、登場人物の緊張や驚きなど心の動きがビシビシと伝わってきました。多くの小説は、犯人や刑事の視点で描かれるものなんですけど、それがもっと俯瞰されて客観的に見渡すことができるってとこ、テクニシャンですわ。本ちゃんの裁判の前に行われる公判前整理手続きが、舞台でいうところのゲネプロみたいに行われていて、だからこそ裁判を円滑に進められるって話、ゾクゾクしました。リアリティのかたまり。

700ページを超える大作でしたが一気読みでした。オススメです。

 

【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点

【文章技巧】読みやすさ・バランス 19点

【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点

【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点

【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 20点

【合計】93点