奥田英朗という作家がいます。
恩田陸とゴッチャになっていたんだけど、『空中ブランコ』で直木賞を獲っているし、『邪魔』で大藪春彦賞、『家日和』で柴田錬三郎賞、『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。私はどれも読んだことがありません。読んだのは、『罪の轍』と『リバー』。どっちも素晴らしかった。
それで、原点でもある初期の作品、『イン・ザ・プール』(文春文庫)を購入しました。短編集です。
これ、変わり者の精神科医をめぐるストーリーで、現代にありがちな心の病を題材としたブラックユーモアです。
行き過ぎた健康オタクや自意識過剰な人、メール依存や過度の心配性などのモヤモヤを斜に構えてぶった斬っていました。
作者を伏せていれば、筒井康隆としか思えません。そんな医者はいないだろうと言わせるかのような開き直った感じ。おそらくは、強く影響されているんでしょう。いや、筒井康隆より品がいい。患者の切迫した心理描写が的確で、医者がそれを言ったらおしまいだよなってところを一々押さえてました。
妄想が肥大化したモテない高校生みたいな作品群がクセになりそうです。
タイトルが残念。『いてもたっても』の方が良かったなぁ。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 13点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 18点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点
【合計】83点