その昔、横浜で営業をしているときにFという法人代理店がありました。
そのころは、地元の事情がわかっていなかったので、代理店の実力を売上げでしか見ることができませんでしたが、Fの親会社は横浜の港湾事業を仕切る企業で、政治的にも影響力のある顔役だったのです。当時は、その会社の善し悪しを外観の綺麗さや表面的な人数規模でしか判断できなかったのが悔やまれます。突っつく場所が違っていました。若いねぇ。
港湾荷役の仕事は、命知らず関係の人が多く、普通の常識と噛み合わないようなところもあるんだけど、理解してしまえば何と言うこともない。それなりの付き合い方があるというものです。蛇の道はヘビ。
そういうところが横浜の街の魅力でもあります。だから、映画やドラマの舞台になりやすいんです。
『スクエア』(今野敏著・徳間書店)は、神奈川県警で「ハマの用心棒」と呼ばれている刑事が、中華街で財を成した中国人の殺人事件の捜査に乗り出す話で、組織の壁に阻まれながらも真相究明に辿り着いていくさまを描いた作品です。いつも同じことを言うようですが、この作家は人物の描写が絶妙で、まるでその人が本当にいるかのように読ませてくれます。応援したくなったりする。ハズレがありません。お見事!
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 15点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 18点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 17点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 17点
【合計】87点