ハードボイルドの小説というのは、どうも性に合いません。
将棋部の私が格闘技にほとんど興味がないのと、だからでしょうか、文章からシーンを起こすイメージが湧かないんです。
多くの作家も引きこもりがちなので、暴力っぽい描写を避けているようなところがありますが、それでも稀に例外がいます。
こういう人は、一般市民が持ってちゃいけないものを持っているような気がします。あるいは、お友達に怖い人がいる。
そして、多作で知られる今野敏も自ら空手の塾を主宰するほどのマニアで、その他にも射撃を趣味にするなど、バイオレンス志向が窺えます。
『切り札』(中公文庫)は、国際的なテロの増加を受けて極秘に結成された特殊部隊に加えられた拳法の達人である主人公の物語です。
中盤に展開される格闘技トーナメントが、なかなかの迫力だったものの、そこに紙面が割かれすぎていて、クライマックスは呆気なく終わってしまいました。この先どうなるかを期待させるような結末は、案の定続編があってシリーズ化されているようです。日本版の007を目指している感じ。登場人物は充分に個性的なので、好みが分かれそうです。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 16点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 17点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 16点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 15点
【合計】84点