ミュージシャンの世界は独特でありまして、一般社会ではドロップアウトするような変人が大勢います。
それを全面的に受け入れる若い子が多いもんだから、これでいいのだという錯覚が起こりやすい。
同じように変人揃いの作家とは、パフォーマーとして接しているかどうか、つまり、モテてる実感の違いで隠キャと陽キャに別れているんだと思います。ヘンだけどモテる。なので、余計にヘンであろうとする。それが、ミュージシャンです。あのちゃんの世界。
すっごいワガママで、非常識が通用する業界なので、まともに生きようとする人たちには、ストレスが溜まります。
だから、ミステリーの題材として描かれやすいんです。誰にでも好かれているような人は少ないんじゃないかなと思ったりします。
今野敏の『フェイク 疑惑』(講談社文庫)は、人気歌手の所属事務所からの独立をめぐるイザコザを描いた物語ですが、作者は大学卒業後にレコード会社で働いていた経験があり、業界について、まぁ詳しい。そりゃあ、楽しいこともたくさんあったろうけど、イヤなものもいっぱい見てきたハズ。そういうのが、作品に繋がっているのだから、大したもんですね。ムダがない。
作品中の刑事の犯人に対するセリフにハッとさせられました。
「どうして人殺しのほとんどが捕まってしまうかわかるかい。わかんなきゃ教えてやろう。俺たちはな、人殺しについちゃプロなんだよ。だが、たいていの殺人犯は素人だ。プロが素人に負けるはずがねぇんだよ」
なるほどねぇ。恐れ入りました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 13点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 16点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 16点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 15点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 15点
【合計】75点