作家には、男性と女性がいます。もっとあるかもしれないけど、大きくは二種類。
それぞれに同性は上手く描くけど、異性についての踏込みが甘くなったりします。
だから、男性作家の登場人物は男性が多くなり、女性作家のそれは女性が多くなる。当然と言えば、当然ですね。
で、こと心理描写の巧みさからすれば、女性の方が複雑かつ多面的なため、作者の個性が強く表れるような気がします。
その気持ちの揺れが細かいほど、退屈だと思うのは男性読者に多く、好みの分かれるところでしょう。
それが、恋愛小説の世界。
同性の誕生日にさえ、プレゼントを贈ろうとする女性脳は、友人たちの恋人選びについても敏感で、ちょっとした心の動きを見逃しません。
それはもう練習量が違う。女性陣は、言葉以外の表情や態度、細かな動きを見逃すことなく、他人の意見も参考にしながら経験値を上げていきます。そういうのって、頭の良さとはちょっと違うんです。オンナ力とでも言いますか。
ジャンルが違うため、興味がなかったものの、話題になっていたことは頭に残っており、ブックオフの棚に605円(定価は891円)で置いてあったので、ついで買いしたのが『傲慢と善良』(辻村深月著・朝日文庫)です。
失踪した婚約者を追う男の物語なんだけど、これは深い。驚きました。
男女が結婚を考えるとき、必ず過去の経験と比較して、いつの間にか相手に偏差値のようなものを付けていたりします。
その時々にプラス面を中心として見れればいいんだけど、マイナス面が引っかかると、なかなか前に進めなくなる。過去には戻れないのにねぇ。
そんなあるあるがいっぱい詰まっていて、朝井リョウの解説まで感心することしきりの恋愛ミステリーでありました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 19点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 20点
【合計】94点