女性作家の比率はどれぐらいだろうとネット検索したところ、おそらく10〜13%であろうとの推計値はありましたが、はっきりしたデータとしては掴めませんでした。
本屋さんの書棚を見る限り、男性作家の方が多いような気がするんだけど、私がほとんど興味がない純文学、とくに恋愛小説のジャンルや児童文学の世界では、女流も健闘しているようです。
そこで、2000年以降の文学賞受賞者の性別を調べました。
直木賞 男性作家37人 女性作家22人
芥川賞 男性作家31人 女性作家25人
江戸川乱歩賞 男性作家22人 女性作家5人
賞レースでは女性が頑張っていますが、乱歩賞のようなミステリーのジャンルは、やはり男性作家が強い。犯罪者の世界は男性優位ですからね。
それを描くのが男性だというのも当然と言えば当然。
その代わり、女性目線の表現は弱くなります。仕方ありませんね。だから、女性心理の核心をついたようなやつを読むと、ドキッとします。
女流ミステリーの第一人者は柚月裕子、宮部みゆき、湊かなえ、そして桐野夏生です。
『ハピネス』(桐野夏生著・光文社文庫)は、タワーマンションに住む幼い子供を持ったママ友をめぐるストーリーです。
億ションと言われるベイエリアのタワマンには、ある一定以上の生活レベルの人しか住んでいません。
だけど、そういう人ほど、他人とのちょっとの差を気にしていたりします。生活レベルの偏差値志向。
夫の年収や社会的な地位。夫婦の実家の潜在能力。そして、学歴にも及びます。足りない場合、子供のお受験だって、比較対象になるんです。
そんな話、男の作家には書けっこない。肉と魚とどっちが美味いみたいに比べられないものを比べようとはしないからです。
しかしながら、多くの女性は、自分にくっついているもので優劣を計ろうとします。グッチやエルメスみたいな話。
そういうときに、タワマンというのは住民の差別意識を可視化したものであり、お受験もまた、ヒエラルキーに乗った世界なのであります。
この物語には、殺人のような「悪いのはこいつだ」的な話はありません。もうホント、そこらじゅうにありそうな話です。だからこそ、面白い。
ゾクゾクするミステリーでありました。
【テーマ】タイトル・時代性・学習性 17点
【文章技巧】読みやすさ・バランス 18点
【人物描写】キャラクター・心理描写・思い入れ 20点
【構成】つかみ・意外性・スピード感 18点
【読後感】共感性・爽快感・リアリティ・オススメ度 18点
【合計】91点