都会のネズミと田舎のネズミ

読書ネタ、スポーツネタ、お笑いネタ、時事ネタを拾いながら、笑いの方向へと導きます。3打数1安打を目指しています。ハズレよりもアタリを読んでください。

マジックミラー

初めて「アリバイ」という言葉に出会ったのは、いつ頃だったでしょうか?

英語っぽくなければ、日本語も漢字が思いつかない独特の語感で、堅気の生活に必要がないため、教科書で習わない。学校で教えない、だけど隠語でもない、特異なジャンルの用語だと言えましょう。

行楽地のホテルで忘れ物をしたとき、親切心で自宅に送り返してはいけません。その宿泊が内緒のものかもしれないからです。アリバイ崩しになってしまう。女子高生が親に内緒で外泊するとき、友人の家に泊まったことにします。これはアリバイ工作。一般人の現場不在証明は、そんなもんでしょう。犯罪とは関係ない。テレワークは気をつけた方がいいかも?

 

ミステリーの世界において常套句であるこの言葉は、日本独自の進化を遂げました。

それは、我が国の交通機関が極めて時間に正確だということが関係しています。海外で時刻表トリックなんて使えませんからね。

分単位での遅れを出さないJRと普通便でも翌日に届ける郵便局は、日本の誇りです。

『マジックミラー』(有栖川有栖著・講談社文庫)は、ミステリー作家の教材となるようなアリバイについての講釈が収められています。

面白いですよ。自身が仕込んだトリックも、作品の中で分類分けしてしまう。どこか理系を思わせる論理性は、文学的にはゴツゴツして読みにくいってのもあるんですけど。

例えば作中に「四人掛けのシートばかりのゆったりとした店内は四割がた客で埋まっていた」というのがあります。変でしょう?

少し前に紹介した『錯迷』では、堂場瞬一が登場人物の紹介を推定身長と体重で表しておりましたが、それと共通する匂い。文学的じゃありません。それがゴツゴツの正体です。

ストーリーは、双子と時刻表トリックと推理作家と私立探偵が混ざった話でした。うーん、トリックはともかくも、動機と殺害方法に共感できないところがあって、82点。