朝起きて、布団畳んで、歯磨いて、顔洗って、髭整えて、鉢植えに水をやって、着替えて、戸締りして、缶コーヒー買って、車に乗って、カセットの音楽聴きながら、目的地へ向かう。
一心不乱に仕事をします。期待されている以上に真面目に。
昼食は神社にあるベンチでコンビニのサンドイッチを食べます。木漏れ日をカメラに収めたりもします。
仕事を終えたら、自転車を漕いで銭湯に行って、その後、行きつけの居酒屋で食事する。時にはカラオケスナックも。
帰宅後は、軽く掃除して、布団を敷いて、文庫本を読み、眠くなって目を閉じる。
そういう繰り返しが延々と続く役所広司主演の映画『Perfect Days』を観てきました。
女っ気のない一人暮らしの初老の清掃員の生活は、極めて単調です。余計な登場人物が絡まないほどに、同じことの繰り返しになる。そういうのを良しとする人もいるわけで、ペースを崩さずに淡々と進めていくのもまた人生なのであります。
そして、主人公が日常のほんの少しの違いに気付くという感性の瑞々しさが、木漏れ日を通じて静かに表現されていました。
「今度は今度、今は今」というセリフには、彼の一度しかない人生を振り切って生きる覚悟を見たように思います。
それにしても、画面に登場する実在するであろうトイレは、建築物として高く評価できるような立派なものであり、海外の人たちは驚くだろうなと思ったりもしました。
そして、それを磨き上げる仕事への誠意。『トイレの神様』と共に、清掃業界の教科書として組み入れたらいいんじゃないかな?
大きな事件は起こらない静かな映画ですが、塗り絵を渡されたような余白がたくさんあって、想像を広げていくのが楽しいと感じる人にはオススメです。あなたにとってのパーフェクトデイズって何でしょう⁇