前職で、電話応対のセクションにいたときのこと。
電話のオペレーターが三十名ほどおりましたが、その中で一番受信件数が多かったのは、一番対応の悪い女性だったという笑えない話があります。
どうしてそうなるかと言えば、丁寧に説明しないからなんですね。
そして、感じが悪いから、お客様も用件をすぐに終わらせようとする。
ところがこの女性、上司の評価が高かったんです。
何故か?
当時、世の中の人事考課には、『目標管理』という仕組みが取り入れられ、先進的な企業がこぞってその制度を導入しておりました。
これは、考課対象期間が始まる前に、予め部門が達成すべき数字を設定し、その到達度合いに応じて考課者が査定するというルールです。
営業のような成果を量で計りやすい業務には向いておるものの、サービスのような質を問われる仕事には適しておりません。
だけど、世の中はみんな、この流れに乗っておりましたからね。
サービス部門もまた、質より量を追求するようになったのです。
結果、電話も質より量、と考える上司が増えたのも仕方ないことかも。
何故なら、部下が事前に提出した“目標数値”に添って査定したとき、その部下を否定する材料がないのだから。
この場合、もともとの目標の立て方に問題があったことは否めません。
仕事の質について評価を加えるには、その上司がその業務に精通していなければ、難しい面があります。
ところが、大きな組織だと、いろんな業務を経験しながら叩き上げで偉くなった人は少ない。
現場を知らない管理職が珍しくないんです。
(つづく)