以前勤務していた保険会社には、「社内モニタリングコンテスト」というのがありました。
これは、サービス部門の電話応対を社外の業者に委託して評価し、ランク付けするというもの。
私が引き継いだ電話セクションは、前年の成績が情けなくも110セクションの中で30位でした。
電話受付がメインの部署としては、恥ずかしい限りです。
前任者は、受付件数の急増によるメンタルケアに必死で、個別の内容なんて興味なし。
たくさん電話を取っていることこそが、部門における正義だとしていたので、むべなるかなです。
だけど…
そもそも、何のために電話を取っているかの視点がそこには欠落しています。
サービス業の電話は、お客様の不安や疑問を取り除き、気持ちよくなっていただくことこそに価値があるのです。
だから、着信音が消えればいいってもんじゃない。
そこで、自部門のコンテストにおける目標を全社一位と決めました。
仕事っていうのは、そこまでプライドを賭けないと面白くありません。
二位じゃダメなんです。
ところが、この目標設定についての上司との面接で、
「去年、30位だったんだから、今年は10位で充分なんじゃない?」
と言われてしまいました。
そのほかの数値目標も二項目について、下方修正するように指示され、反論すると、
「あなたがそれでよくっても、部下のみんなが困ることになる」
だと。
つまり、ボーナス考課は、この目標数値に対する達成度合いで決まるので、あまり風呂敷を広げすぎるなということです。
なんだ、そりゃ?
ここで言う「目標」とは、自分が間違いなく達成できそうなレベルを示すことらしい。
つまり、ゴルフの握りみたいな…
決して、ギリギリまで努力して達成できるかもしれないみたいなことは、言わないのがコツ。
これこそが“大企業病”なのであります。
現実の「目標管理制度」において、実現度は低いものの、やったほうがいいこと、つまり理想みたいなビジョンは拡げちゃいけません。
かくして、この制度の中では、いかに低い目標設定を行うかの知恵比べが行われます。
こういうのって、小さな会社には向いていません。
何故なら、ちっちゃい企業は、取り柄がないと生きていけないから、必死で点を取りにいかざるを得ない。
大きい会社は、評価を円滑に行っていく上でマイナス面に目を光らせるので、欠点が多いとダメ。
だから、言われもしない新規の仕事をリスクを顧みずに進めていくやり方をとろうとすると、孤立してしまうのです。
(つづく)