『日本政治のウラのウラ』(講談社)では、名インタビュアーの田原総一郎氏が森喜朗のホンネを引き出しています。
以下は、文中で印象に残ったコメントです。
・日本の官僚はだいたい一年か二年で異動になるので、任期中にミスをしなければいいわけですよ。
異動後に困ったことが起きても「オレは知らないよ」と言うのが官僚です。
・「地元の政治家の秘書になったら絶対にダメだ。もしなったら、仕えていた代議士と戦わねばならない」と藤波孝生先生から教わった。
・田舎の警察が札束をバラまくような選挙違反を摘発できないのは、そんなことをしたら、町中の人間を豚箱にいれなきゃならなくなるか
らだ。
・昔のこと、ある政治家は〇〇大学に50人の枠を持っており、そこを受験する方はご相談に応じますなんて張り紙を事務所に出していた。
・「国会運営はタイミングなんだ。相手が弱ってきたなという時に押す。相手が強い時には引く。そのタイミングを見てやりなさい」
と保利茂先生から教わった。
・金丸信先生は、議運の海外視察の際に、女房同伴にしてくれた。議員自身は経費だが、妻の分は出ない。
だから、それを金丸氏が負担して招待という形。女房たちは、金丸信者になる。これが効果的なお金の使い方だと。
ちなみに、金丸氏の奥さんは芸者さんだったので、そのアドバイスがあったらしい。議員の妻同士も含めて仲良くなるのは満更でもない。
・自民党の本質はタカ派である。なぜなら、選挙区で社会党や共産党と戦って勝ち抜くのだから。余程の木偶の坊でない限り、
旗幟を鮮明にするためタカ派となる。さらに言えば、ハト派の自民党総裁は、人の心を集められないので総理になれない。
・保守というのは、正しいこと、間違っていないことをしっかり守っていくこと。
新しいものも咀嚼していかねばならないけれど、心柱を動かしてはいけない。
・国民によく思われたい人は野党の政治家になれ。政権与党の政治家になるのなら、まず国民に嫌われてもいいという覚悟を決めろ。
これは竹下登先生の言葉。
・政治家は、自分よりも若い人や当選年次が下の人を総裁にしようとすると抵抗する。
・東京や大阪選出の代議士は、首相候補になれない。それは、土日が忙しくて、派閥の面倒を見られないから。
地方選出で、地盤が強固だと、地元に帰れない口実もできて、他の議員の応援ができやすいということ。
・上を目指す政治家は、野党とのつながりを重く見るべきである。
全体を通じて受けた印象は、義理人情を第一に考え、人間関係を大切にしているということ。それは、相手が敵対勢力だとしても、全否定しない懐の深さを感じました。稀有な人材だというのが、よくわかります。
残念なのは、謝り方が下手だったこと、下手過ぎたこと。
だけど、83歳でこれだけの功績を上げてきたキャリアですからね。イジメっぽいメディアの質問は、悔しかったのではないでしょうか。
減点評価は、官僚だけでなく、国民性であると思いました。
晩節を汚したようであり、残念だと感じています。