脚本や演出を大切にして、状況が生み出す食い違いや不条理さで笑いを誘うスタイルは、シチュエーションコントと呼ばれています。
今はなきアンジャッシュがその代表格でしたが、ただ今その先頭を走っているのが東京03であることは、異論がないでしょう。
彼らは、一発ギャグからほど遠く、ボキャブラ的なショートコントとは無縁でした。だから、最低7〜8分の尺が必要であり、ショートレンジを求めるテレビでは、なかなか活躍できなかったのです。それで、自主公演やライブイベントに拘って全国各地を回り、自分たちのスタイルを定着させました。特徴的なのは、伏線を回収するスタイルで、何気ないひと言や状況設定が、後になって謎解きのように繋がっていくのです。「あ〜そういうことだったのか」のカタルシスが満足度を増幅させています。
短編の小説は、ショートコントにも似て、そんなに多くの論点を持たせません。「そうそう、あるある」的なクリーンヒット狙いの作品が多く、手軽に読み進められるのが良さでもあるわけです。
ところが、その常識に風穴を開けたのが城山真一です。
2/17のブログで紹介して高評価した『看守の流儀』でしたが、続編の『看守の信念』(宝島社)は、それを上回る衝撃となりました。
それぞれが80ページ程度の作品でありながら、しっかり材料を揃えつつ伏線を回収していくギミック(仕掛け)は、今まで経験したことがないものです。スゴいのひと言に尽きる! 何を置いても読んで欲しい一冊です。
ただし、これには処方箋があって、必ず『流儀』→『信念』の順で読むこと。単品でも充分イケますが、順番を守れば効果覿面、相乗効果が働くこと請け合いですよ。いやぁ、素晴らしい! 98点。