常識を気にせず、フィクションの世界を徹底できるのが、古くは忍者モノでした。
それに続いたのが、怪獣モノ。そして、それをやっつけるヒーローモノ。
テレビでその先鞭をつけたのが、円谷プロの『ウルトラQ』(1966年1月〜)です。
東京五輪のマラソンで銅メダルを獲った円谷幸吉と体操競技のウルトラCが重なって、ワクワクする小学校3年の日曜夜7時でありました。
なんだかよくはわからないけど、毎週次々に登場する怪獣たち。覚えられないので、図鑑を買います。動植物よりも怪獣がいい。
最初の絵の具をかき混ぜたようなタイトルバックが印象的でした。マイナーコードの音楽もミステリアスで、ちょっぴり大人っぽい。次々に与えられる情報が、ワンランク上にある感じで、それが子供たちの好奇心を鷲掴みにしていたように思います。
怖いねぇ、こういうのが出てくると。毎週、肝試しをしているような稲川淳二ワールドで、少しだけ大人の仲間入りだったと言えるでしょう。
そして、その半年後に現れたのが『ウルトラマン』です。
Qの時代、怪獣を担当する専門部署がなかったところへ日本政府は「科学特捜隊」を組織しますが、そんな程度で週替わりに出てくる怪獣に勝てるわけがない。そこで、光の国から助けに来たのがウルトラマンだということにしました。
ってな話が予備知識。そういうのが分かった上で、さらなる荒唐無稽を理解しましょう。
で、行って来ました『シン・ウルトラマン』。
いいですねぇ、次々に暴れまくる怪獣(映画では禍威獣と言ってました)は、もの凄い迫力でした。電気エネルギーを食べまくったり、放射能を放出したり、それはもうやりたい放題。この禍威獣たちが、何故か日本にしか現れないので、他国は然程緊張感を持ちません。ウクライナ的。
スゴい温度差だけど、長澤まさみも西島秀俊もそんなにビックリしないので、頼りになっているようないないような。政府は禍特対(禍威獣特設対策室専従班)に任せっぱなしで、自衛隊は指示待ち。米軍は見てるだけです。そんなものかもね、当事者でないと。あっ、武器は送ってくれました。やっぱり、憲法は改正した方がいいかも?
そこに立ちはだかるのがウルトラマンってことなんだけど、わざわざほかの星からやって来て、彼が何のために怪獣をやっつけるのかは最後までよくわかりませんでした。あと、異星人同士が居酒屋で日本酒を飲んで話し合うってのもなんだかなぁ。それは、飲兵衛のおっさんの発想です。
前半が100点、後半が75点とかなり落差のある映画です。でも、米津玄師の音楽がグッと引き締めます。意外に海外で受けるんじゃないかな?異星人をプーチンに見立てたりして。
いや、前半だけでも一見の価値があります。国籍、年齢を問わず楽しめるってのはスゴいのかも??