剣道をやっていた友人に、表情や仕草で仕掛ける将棋の番外戦術について話したところ、
「それは、フェイントのことだな」
と、あっさり看破されてしまいました。スポーツの世界では当たり前に行われているのです。
逆に、相手のクセを見抜こうと対局者は必死に観察しているわけで、考えているのは自分だけだなんて思わないことだと。
なるほど、持つべきものは友だと改めて思いました。
将棋界は、羽生善治十九世名人の登場と共に、ガラリと雰囲気が変わりました。
仲間の棋士同士で研究会を開くなど風通しが良く、奇人変人と言われるような人がいなくなって、深酒をせず健康管理に気を使う、ギャンブルにのめり込まない、良識ある上品な紳士が多数派を占めるようになったのです。
女性の棋士が急増した影響もあるかも知れません。もはや、男の世界ではない。
だから、幼稚な番外戦を仕掛ける輩もいないのです。マナーの悪さは将棋が弱いよりも恥ずべきことだと思うようになりました。
(つづく)