朝井リョウという人がいます。
10年前に初の平成生まれとして直木賞を受賞しており、現在33歳と今後を期待される作家の一人らしいです。
私はこれまでに同氏の作品を読んだことがありませんでしたが、オードリーの若林正恭が『正欲』をオススメ本として挙げていたので、早速取り寄せてみました。
これが哲学書のように難解で、言わんとしていることが理解しづらく、なかなか前へ進めません。
ボーッと読んでいると、情景がわからなくなってしまう、独特の文章技巧です。
「多分どこもそうだと思いますけど、病院って想像以上に人間の嫌なところが詰まった組織なんですよね。命を預かってる場所なのに、人間関係っていうか、政治的なものでいろんなことが決まっていくんです。そういうのいっぱい見てきて、難しそうな仕事してるから偉いとかすごいとか、そういうことを全然思わなくなった」
「…若いって言うことだよな、と思う。背中に余計な脂肪がついていないこと。自分の隙を埋めるためには思いつきで誰かの感情を引っ掻き回してみてもいいと思っていること。社会の多数派からこぼれ落ちることによる自滅的な思考や苦しみに鈍感でいられること。鈍さは重さだ。鈍さからくる無邪気は、重い邪気だ」
「大晦日とか正月って、人生の通知表みたいな感じがする」
全体の3分の2を過ぎても全体像が見えないオムニバス方式の展開は、いつもだったらリタイアするところなんだけど、何となく魅力的な描写に引き摺られて、読み進めました。
終盤まで到達して、心に激震が走ります。
そういうことだったのか。
いやぁ、一本取られました。深いです。ダイバーシティ論。
ネタバレになるので、これ以上は書きませんが、読後にいろんなことを考えさせる点でスゴいと思います。
途中までが苦し過ぎるので95点だけど、これは現代の哲学書、夏目漱石の『こころ』っぽい。違うかな?