なーんとなく知っている作家が宮沢賢治でありまして、雨ニモ負ケズとか風の又三郎とか、むしろコピーライターを思わせるような言葉の魔術師です。掴むのがウマい。俳句のセンスなんでしょうね。短い方が得意だというような。
『注文の多い料理店』なんて、大喜利、落語のセンスです。そう来たか、と。
で、ちゃんと読んでみようと、『銀河鉄道の夜』(偕成社文庫)を手にしました。
ジャンルで言えば児童文学なんでしょうけど、なかなか難解でありまして、昔の子供はこういうのを楽しんでいたんでしょうか?ファンタジーなのはわかりますが…
まず、文節が長い。子供相手に聞かせているとは思えません。
「すると、どこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションという声がしたと思うと、いきなり目の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍いかの火をいっぺんに化石させて、空じゅうにしずめたというぐあい、またダイアモンド会社で、ねだんが安くならないために、わざととれないふりをして、かくしておいた金剛石を、だれかがいきなりひっくりかえして、ばらまいたというふうに、目の前がさぁっと明るくなって、ジョバンニは思わずなんべんも目をこすってしまいました」(原文ママ)
句点の使い方がヘンだし、化石させての意味が分からないし、ジョバンニって外国人名の設定も違和感だらけです。
全体を通じて、畳語・擬人化・オノマトペを駆使していました。夏井先生と気が合いそうな文章スタイルです。
そういうのって、田舎で育ったからなんでしょうね。音や匂いに対して、繊細であること。風を感じる能力も都会人にはないセンスではある。
なるほど、詩みたいな文章だけど、簡潔にまとまらないのが宮沢文学なのでありました。
そして、子供向けだと言いながら、詰め込んで大人に読ませるってとこ、深いんだなぁ。点数は付けられません。