学生時代、一番仲がよかった友人のＭは、すごくいいヤツなんだけど、圧倒的なコワモテで、本人もそれを自覚してか、冬の夜でもサングラスして歩く硬派でした。
何故、そんなことしてるかと言うと、目つきが鋭すぎるからです。
つまり、常に闘おうと気負っているアンチャンを刺激しやすいから。
普通に歩いていても危険がいっぱいなんですね。
だから、サングラス。
夜なんか、よく「暗い」とボヤいていましたから、大変だったでしょう、怖い顔の維持管理。
いいことだってあります。それは…
あるとき、金曜日でしたが、彼の運転で錦糸町のあたりを走っておりました。
そして、彼はこうつぶやきます。
「そういや、今日はチャンピオンの発売日だったな」
数10メートル先の売店に漫画雑誌の陳列を見つけると、車線変更及び急ブレーキ。
哀れ、左レーンを走行していたバイクが、これに巻き込まれます。
ガッシャーン
高校生っぽい少年は、ひっくり返って裂傷を負い、バイクはミラーが割れて車体も歪んだ様子です。
あちゃー、これは面倒なことになったわい。
ちょっと前の安全なところにクルマを停めて、友人は引っくり返った少年に近づきました。
このとき、意外な光景が。
「ご、ごめんなさーい（ヒィー）」
なんと、出血している人間が謝るではありませんか。
時代劇でこんなシーンを見たことあるけど、現実の世界でねぇ。
ちなみにＭのクルマは、廃車寸前のボロ車で、へこんだといってもどこだか分からないほど。
一方、少年のバイクは。
うーん、もしかしたら、もう乗れないかもしれません。
「大丈夫ですか？」
と、これは友人。あんまり大丈夫じゃないと思うけど…
「いえ、全然、平気です。ごめんなさい（ブルブル）」
断っておきますが、Ｍは極めて冷静かつ紳士的に臨みました。
ただし、サングラスを外したもんだから、余計に威圧したかも。
“とにかく私のことはいいからどっかへいなくなってもらいたい”オーラが出まくっていたので、お言葉に甘えました。
あの少年は、今ごろどうしているでしょうか？
本日、当店の駐車場内で、食事休憩中のお客様のクルマに、取引業者のクルマが後方不注意でぶつかってしまい、警察が実地検分に来るなど、大騒ぎになりました。
これが、旅行中のお客様が新山口駅で借りたレンタカーだったからややこしい。
前職では、生命保険の支払い部門にもおったのですが、そのときを思い出しました。
対お客様、対レンタカー業者、対取引業者、対警察、対修理工場…
気を遣いながら、サービス業は天職だなぁと改めて感じた次第です。
そんなにペコペコする必要もないんだけど…
どちらかと言えば、あのときの少年に近いんだなぁ、私は。
