毎年のようにノーベル文学賞候補として紹介される村上春樹さんの小説を、私は読んだことがありません。
純文学のジャンルが苦手なのと、メディアにほとんど顔を出さないので、興味を持てなかったからです。
と言いながら、書棚を整理していると、30年前に入手した『村上朝日堂の逆襲』というエッセイ本が出てきました。
安西水丸さんが挿絵を担当しており、そのポップな外観が目に止まって購入したようですが、手をつけずにそのままにしておりました。
情けなくも、そういうことが多く、今更のように慌てて掘り起こしているところです。
村上氏の文学的な価値については、よくわかりませんが、その文体から変人であることは間違いないようです。
規則正しい世間常識に背を向けているようなところがありますし、一箇所に定住することを好まない。したがって、ディープな人間関係は拒絶し、テレビをほとんど見ず、野球はヤクルトを応援する。
なるほど。変わっている人は、普通と違う見方をするので、作家に向いてるってことですね。
ブレイク前の極貧生活時代、嫁さんが働きに出て、本人は家にいる、いわゆる主夫体験を半年ほど続けたそうです。
朝、7時に起きて食事を作り、妻を送り出すと食器を洗う。その後、洗濯・買い物・昼食・アイロン・掃除。少し、まったりして夕食の支度。そして、妻の帰りを待つ。「…」当時は、携帯電話がなく、貧乏だったのでテレビもラジオもない。「…」
何時に帰るのかがわからないままに待ち続けるというのは、なんとも言えない感覚を生みます。
殴った方は忘れてしまうけど、殴られた方は覚えてるって、そんな感じ。
いろんな経験をしておくものです、作家の場合特に。
そういう意味では、友人も選んだ方がいい。周囲に普通じゃない人がいればいるほど、創作意欲が湧くのであります。