ひと昔前、ハゲてることはとても恥ずかしいので、男性のカツラが流行しました。
テレビのCMも、ゴールデンタイムにたくさん見たように思います。すこーしずつ増やすやり方が、説得力を持ったようですね。転勤のタイミングがチャンスだなんて話もありました。
だけど、一度手を出すと、後が大変です。何故なら、カツラだって抜けるんです。メンテナンスが必要。加えて、床屋さんの問題。被ってる人が行く床屋さんは別注なので、お金がかかり続きます。
ここで、何より大事なのは、カツラだってバレないこと。ハゲてることより、カツラだってことの方がもっと恥ずかしい。
だから、絶対に流出してはいけません、アートネーチャーの顧客リスト。安全だということをことのほか強調していたことでしょう。
逸見アナウンサーの前までは、がんは本人に知られてはいけないというのが常識でした。
「がんイコール死」だと思われていて、9割以上、ほとんどの患者は、自分ががんだということを知らされません。
がんセンターに入院して、胃を切除してもお医者さんは「あなたは、がんじゃない」と言う。無理がありますが、ホントにそれが現実でした。
そうなると、がん保険はどうするって話です。
がんに罹っても、本人が病名を知らなければどうにもならない。
そこで、がん保険は給付金受取人を本人以外としました。それまでの常識では、病気入院の給付金は患者本人が受け取ること。だけど、がん保険では、入院給付金と死亡保険金の受取人欄を一本にまとめて記載させるようにしたのです。死んでしまったら、自分が受け取ることはできないので、家族の名前を書き込むことになる。保険の請求権は受取人にあるので、がんに罹ったら受取人が保険会社と連絡を取り合うようになります。これが一つ。
そして、アフラックでは給付金の請求情報を、支払い部門の限られた人間しか分からないようにしました。保険がおりたかどうかどころか、請求があったかどうかすら分からない。たとえ同じ会社でも秘密が漏れないようにしたのです。これが二つめ。
さらに、がん保険の請求が始まるとマンツーマンの担当者制とし、患者の自宅以外の場所を通じて連絡を取り合いました。知っているのは、家族とお医者さんと担当者だけ。封筒は、社名のないものを使用し、差出人は担当者名で行う。もちろん、電話連絡も同じです。
ほかにもノウハウがいろいろあって、保険請求を行うことで患者さんに病名を知られてしまうようなことは、一度もありませんでした。
今でこそ、患者さんが自分ががんであることを知らない方が珍しくなっておりますが、当時は「がんイコール死」ですから、とてもそんなことは言えなかったのです。そんな中で知恵を絞り、手間をかけて、仕組みを守り続けておりました。
(つづく)