映画が楽しいのは、何と言ってもスケールが違うことです。
予算はもちろんのこと、豪華俳優陣、長期間にわたる撮影、ロケ地が広範にわたること、小道具や大道具についてのこだわり、エキストラの人数の半端なさ…テレビの2時間ドラマでは、逆立ちしても追いつけません。
で、三谷作品の場合、豪華俳優陣の一点に絞り込みます。そこに執拗に拘っているように思います。
極め付けは、2008年公開の『ザ・マジックアワー』です。
主演の佐藤浩市のほか、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか、西田敏行、小日向文世を中心に、香川照之、伊吹吾郎、戸田恵子、寺島進、梶原善、近藤芳正、甲本雅裕、小野武彦らの芸達者が脇を固めています。
加えて劇中劇の中で、中井貴一、天海祐希、山本耕史、唐沢寿明、鈴木京香、谷原章介、寺脇康文がちょっとだけ顔を出すし、市川崑、香取慎吾まで出てくるとは、まるで日本アカデミー賞の授賞式でありました。
このあたり、三谷氏と役者との結びつきの強さを感じさせます。
ほかの要素については、むしろドラマっぽい作り。なので、脚本こそすべてみたいに仕上がっています。
アンジャッシュは10分程度のスレ違いコントですが、この作品は2時間かけての壮大なスレ違いストーリー。三谷幸喜、スゴいです。
注目すべきは、役者が役者を演じるという高度なテクニック。下手なんだけど、素人ではないという主婦の料理自慢みたいな演じ方は、ミリ単位でのこだわりで成立します。役者もそうだし、シナリオもそう。通常は、観客を魅了する演技ってことなんでしょうが、三谷作品ではそれを監督や出演者とも勝負しているような、そんな空気を醸し出しています。佐藤浩市、スゴいです。
先日、『虎狼の血』というR15指定のヤクザ映画を観たので、中和するためのコメディ映画ですが、絶妙にハマりました。
読書もいいけど、映画もいいねぇ。